暑いと集中力はありません。2006-08-02

訓練は順調に進んでいるといいたいのだけれど、
残念ながらうだるような暑さに、主従で集中力を切らしてます。
8月最初の訓練は、捜索と遠隔と熟練。
捜索こそてきぱきとした『そらん』だけど、
遠隔では、日差しを避けたくて、すぐに台の下にもぐりこむし
油断すると「待て」がかかっているのに、
水を飲みにいってしまう。
僕に到っては、指示を利かせようとする気力がただでさえ少ないのに、
暑くて完全に引っ込んでしまっています。

こんなことでは、正しい「そらん」のハンドラーにはなれません。
8月いっぱいは、ぐうたらすることにしたいなあ。

パイド・パイパー2006-08-04

副題は『自由への越境』

ネビル・シュート  創元推理文庫  700円

最初気づかなかった。
著者が名作『渚にて』のシュートだということに。
『渚にて』は、紛れもなく20世紀SFを代表する一冊である。
再び戦争の時代に入った21世紀にこそ、
もつとも読まれてよい世界の週末の物語が『渚にて』だ。
この『パイド・パイパー』も、『渚にて』同様感銘深い作品となっている。
SF ではなくて、第2次大戦当初を背景にしたロードのベルとなっている。

物語は、ドイツの空爆が激しさを増すロンドンから始まる。
70歳になった元弁護士・ハワードとクラブのオーナーが、
空襲のさなか語り合うところから始まる。
ハワードは少し前まで、息子を戦争で喪う傷心を癒すため、
フランスの片田舎に釣竿を道連れに旅に出ていて、
イギリスに戻ってきたばかりだというのだ。
それもほとんど歩いてばかりで。。。

ドイツの侵攻により、ダンケルクから連合軍が撤退するまで、
ハワードは戦争中だということを忘れていた。
しかし、戦火が激しさを増すにあたり、
イギリスでできることをしたいと考え帰国を決意したのだった。
そのハワードに知人が子供たちを連れて帰国してくれと依頼をする。

ドイツ軍の侵攻は早く、
子供を連れた老人はイギリスはおろかパリにも行きつけない。
ドイツ軍に見つかってはいけない。
見つかれば、イギリス人は捕虜として拘束される。
子供たちだけでも無事届けなければならない。
子供たちの好奇心にも注意をしなければならない。
注意しても英語を使う子供たちをなだめすかししながら、
老ハワードは、辛抱強くことに当たり問題を解決していく。
しかし、パリを迂回するバスがドイツ軍の襲撃を受け、
いよいよむドイツが支配するフランスを徒歩で移動しなければならなくなる。
ハワードと子供二人の一行は、進むにつれ、子供の数が増えていく。
一行は無事イギリスにたどり着けるのか。

『パイド・パイパー』は単純にいえば、
戦時下、ドイツに占領されたフランスをイギリス人が脱出するだけの話だ。
いくつかのエピソードが挿入されていて、
それらが人の生きている思いを、鮮やかに描き出していはするものの、
本当に単純な話だ。
劇的なことは何もない。
ひたすら、困難が発生しても投げ出さずに、
頭を垂れて救いや助言を聞き入れ、正直であり続けることだけを武器に、
最大の難関すら克服した老人の物語である。
淡々とした描写が、より結末を鮮やかにしている。
静かに興奮できる一冊だ。

2006-08-05

岡崎武士  角川ティーンズルビー文庫  457円

1993年に単行本化され、2000年に文庫化された一冊。
CLAMPの大川七瀬原案。
いつものように、古本屋で85円で買ってきた。

短いオムにパス形式で、さまざまな『恋』を表現している。
淡い『恋』、許されない『恋』、片思い、一途な『恋』、醒めた『恋』etc.
短いひとつずつのエピソードを見ても楽しいけど、
全体がつながっていて、ひとつの『恋』の誕生~終末、
そして再生という物語ともなっている。

まあ、ひとつずつのエピソードにけちをつければきりがなし。
さらっと読んで、さらっと味わうべし。
可愛い女も、可愛い男もずいぶん出てくるけれど、
やはり絵空事。
でも、「だからこそ」いいんだろう。

岡崎武士はCLAMPの兄貴分。『精霊使い』が代表作らしい。
女の子がとても可愛くかける人ですね。
可愛いといっても、ロリロリではない。

そして五人がいなくなる2006-08-06

はやみねかおる  講談社  533円

著者は小学校の先生をしていたそうだ。
子供たちにわくわくするような「お話」をプレゼントしようとして生まれたのが、
13作に及ぶ「名探偵夢水清志郎事件ノート」シリーズだ。

と、訳知り顔で記したが、僕にとって、この著者には本作が初めての出合だ。
主に小学校高学年から中学生がターゲットとされる
「青い鳥文庫」などが活躍の舞台であったため、
大人の読者には知られていない作家だったということになる。
今回はじめて講談社文庫版として登場し、
10年を超える著者の作品が大人の目に留まることとなる。
かつ目すべしだ。
これほどの完成度をもっった作者が、
大人向けのミステリを書いていなかったのは損失といえる。

夏休み、4人の天才少年が、伯爵と名乗る謎の人物によって失踪させられる。
舞台となったのは、開業間もない巨大テーマパーク。
衆人環視の中で一人目が消え、
やがて予告の元3人が消える。
自ら命探偵と名乗る夢水清志郎は、
仲良くなった3つ子たちとともに調査に当たる。
最後の事件が起きた後、
「謎はわかった」といったまま沈黙を守る夢水清志郎。
夏休みが終わるころ、思い出したように事件の謎解きをおこなう。
キーワードは「夏休み」だったのだ。

子供たち向けということで、ところどころとんでもない設定があるけど、
たとえばジェット・コースターが時速400キロに達するなんていうような、
話しの中心にあるのは夢とやさしさというところが心地よい。
読み終えたとき、関係者全員が幸せになっている、
こんな安心感は、長らく味わったことがありません。
宮部みゆき氏が言う
「はやみねかおるさんは子供たちだけのものではありません」
は、ほんとうです。

シリーズは文庫化されていくようですが、
続いて読みたい作家の一人になるような気がします。

それにしても暑い。暑すぎる。2006-08-06

ほんまに暑い。枚方では38度だったそうだ。
近江でも36.8度。ちょっと暑すぎるよなあ。
こんな日はクーラーの効いた部屋で、
麦茶でも飲みながら、寝転んでゆったりしているに限ると思う。
だけど、何の因果か、犬孝行に出なければならない。
犬たちは暑くても、プールに浸かり体を冷やすことができる。
僕ときたら炎天下、帽子もかぶらず、流れる汗を拭きもせず、
ただ犬たちのご機嫌を取っているのだ。

たっぷり3時間、ジョンも「そらん」も満足したかな。
ありゃ、ジョンが帰るのをくずっている。
なんと、ジョンがジャックラッセルの子と別れを嫌がっている。
初めてよその犬に執着を見せる、ジョン。
いろんな顔が出てきたね。

1時間かけて2頭を洗って帰ってきたら19時。
2頭ともきょうは満足したのか、ベッドですやすや。
写真を撮ろうとしたらポーズをとりました。

あれから1年2006-08-06

「ごお」との最後の八ヶ岳行きから1年が経った。
なんだか遠い昔のようでいて、つい昨日のことのようにも思う。
「ごお」が「ごお」でいることが難しくなった日。
水泳中の発作で沈んでいくのを助け出し、
水を吐かせたら、何とか生還してきたときには、
「ごお」との生活は、まだまだ続けられると思っていた。
まさか、その日から2月を経ずに逝くとは思っていなかった。

人にはいろんな記念日があってよい。
しかし、僕には「ごお」との特別な楽しい記念日はない。
あるのは8月6日と9月23日だけなのだ。
「ごお」が「ごお」でいるのが難しくなった日と、命日。
でも、そのほかの毎日は楽しい記念日だったんだ。
特別に楽しい日々なんてなくて、ほんとに毎日が楽しい日々だった。

ちょうど一年前の今頃は、多賀SAあたりまで戻ってきていた。
「ごお」の発作が続いては大変と、予定をすべてキャンセルして、
15時ごろから、興奮させないようにしながら帰阪していたのだ。
5日の0時ごろから出発して、6日の0時過ぎに大阪に戻った、
そんな苦い一日だった。

悪癖を中止していると2006-08-08

いろんなことが見えてきます。
30年来の悪癖を突然やめることにしたのです。

はっきりとした意思を持たぬ間に、なんとなくタバコをやめてしまって35日。
やめたというわけでもなく、なんとなく買うのを中止している。
だから出張中に、旧知の人たちと再会したら、
なんとなく5本ももらって、吸ってしまっているし、
床屋に行った折も、ついつい1本吸っていたりする。
禁煙中でしんどいということもない。

もともと、やめようと思ったらいつでもやめられると豪語していたのが僕だ。
たいして苦労せずにやめられることは知っていた。
現に何度も禁煙してきた実績もある。
問題は、やめようという意思がないことなのだ。
だから、知らぬ間にずるずると吸い出してしまう。
今回の禁煙も、実は意志がはっきりとは存在しない。

同僚の喫煙者が、心臓疾患になったため、刺激を避けようとか、
7月からの値上げに音をあげたという側面もある。
僕自身が心臓が壊れかけているというのも要因になっている。
で、タバコをやめていて思うのは、
やはりタバコだけを目の敵にする世の不思議。

自分が喫煙者に戻ることはないようにしたいと思うけれど、
世の非喫煙者のいけにえ羊ごっこの仲間入りだけはしたいとは思わない。
やめてみて、今思う。
医師も含めて、タバコを罪悪視したのは、
何かから目を背けるためだったに違いない。

もっと世の中が柔らくあってほしいと思うけれど、無理かな。

暑くても、訓練だよなあ2006-08-08

きょうもほんとに暑かった。
台風の影響で風があるから、少しすごしやすいというものの、
絶対的に暑いのに違いはない。暑くても訓練は休みにはならないのだ。
「そらん」は定刻のお迎えに、いそいそと出かけて行ったらしい。

日曜あたりから体調を崩していて、僕は耳がまた聞えにくくなっている。
医者にも通わなければならなくなって、訓練に行く時間は遅くなる。
結局、僕が訓練されに行ったのは、2時前になってしまった。
最も暑い時間帯だ。
基本服従は「そらん」は暑いためかやる気なし。
しきりに木陰に逃げ出そうとしていた。
何とか間とかヒールできていたものの、
10分も経ったら、少し気を緩めると、一目散に木陰へと逃げ出す。
逃げ出さないだけの威厳は僕にはないということらしい。

捜索はルンルンとこなしているだけに、
ハンドラーとしての未熟さは覆いがたしだ。

また、捜索試験に挑戦する日が来そうだが、
こんなことじゃ、永遠に通らない。とほほほほ。

黎明に叛くもの2006-08-09

宇月原晴明  中央公論  952円

ぶ、分厚い。646ページもあったよ。
2006年度の「山本周五郎」賞を受賞した作家なんだそうだ。
戦国伝奇小説だそうだ。確かに伝奇小説だわな。
「魔界転生」なんかとおんなじだわな。

面白いよお。だけど、愉しくないよ。読んでいても。
たぶん順番が違ったのかな。
「信長」を読んでから本書を読めばよかったのかもしれない。
なんともいえませんが。。。

松永久秀が本書の中心だ。
戦国時代に最も怪しい光を放った男、弾正久秀。
彼はペルシャの暗殺法を体得していた。
後の斉藤道三を兄弟子に持ち、日の本を二分しようとの盟約を交わす。
道三が波山の法を捨て、美濃国守にのし上がるのに対し、
久秀は波山の法を縦横に使い、
三好長慶を将軍に代わるものに据えようとたくらむ。
しかし、波山の法の禍々しさは主家を滅ぼし、久秀は妖人となる。
道三が見込んだ信長に、一度は引かれながらも、
自らが日輪であるべきだとの思念から、日輪たる信長に取って代わるべく、
妖しい術を自在にこなし、信玄・謙信・光秀などを翻弄し、
信長に対抗する。

ペルシャの暗殺教団が、モンゴルに滅ぼされたものの、
日本にまで渡来し、その教団の復興を狙っていたとする。

光秀が久秀との邂逅によって己を喪っていくさまなどは、鬼気迫る。

虚と実が交錯する、狂った異形の戦国史。

ドア2006-08-11

山田悠介原作  杉山敏作画  幻冬舎  660円

山田悠介の作品は「親指探し」を原作で読んだだけだ。
「リアル鬼ごっこ」をコミックバージョンで読んではいるが、
山田ワールドを語るには、原作をさして読んでいないので、
見当はずれを各課も知れない。

山田悠介の作品世界は怖くない。
オリジナリティーも、さほどあるとも思えない。
「リアル鬼ごっこ」は設定は真新しかったが、
漫画家の力量なのか、原作者の世界観なのか、
中途半端だったし、「親指探し」も、どこかで見たような世界観だったる
ホラーとして人を恐怖に誘うには、いまひとつだった。

このコミックは、山田悠介の新作をコミック化したものだということなのだが、
3つの作品が収められている。
「ドア」は、ひとつドアを開けるたび、罠が作動し、誰かが犠牲となる。
最後の一人になるまでドアは続いて、助かったと思ったらまた…
エンドレスでゲームが続くという話です。
「8.1」は、都市伝説をベースに進められる。
捨て子トンネルというスポットを訪れた若者たち。
偶然にも、そのうわさに近い事実があった。
双子の一人が捨てられていたのだ。
化けトンめぐりで双子の片割れが訪れたとき、恐怖が始まる。
「ジェット・コースター」は、宙返りコースターが突然止められ、
残り一人になるまで、ぶら下がらされる。そういう悪夢です。

山田悠介は、読めばそれなりに面白いかもしれませんが、
僕は個人的には評価しません。
すべて聞いたような話でしかありません。
それでも、原作のほうがよいのでしょう。
比較のためいつか読んでみます。