猟犬探偵2006-10-02

稲見一良  光文社  478円

『セント・メリーのリボン』
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2006/04/21/335255
に続く竜門猟犬探偵舎もの。
なんでも「06年度この文庫がすごい!」で、
『セント・メリーのリボン』は2位に選ばれたそうだが、
こちら「猟犬探偵」も前作に感じた清々しさはそのままで
とても後口の良い作品が収められている。
「トカチン、カラチン」「ギターと猟犬」「サイド・キック」「悪役と鳩」の4作品が収録されている。

この中では「サイド・キック」が好きだ。
シェパードと馬を連れて厩務員が失踪した。
馬はシルバーゴーストといい伝染病になったため薬殺を予定している。
その馬と犬を連れ出て行った厩務員を、
依頼主の菅井が探せというのだ。
旧知の川谷の助けを借り、一行の足跡をつかんだ竜門は、
愛犬ジョーとともに東北で一行を補足する。
そして厩務員の口から真相を聞かされる。
相前後して菅井の娘から、菅井の考えを聞かされた竜門は、
一行の目的を果たさせるため動き出す。
卑劣にもヒットマンをよこした菅井への竜門の怒りは、
老厩務員への暖かい贈り物となる。

猟犬探偵のはずが馬が絡む物語、
トナカイを探すこととなる「トカチン、カラチン」、
いずれもはぐれ探偵竜門の信念と優しさがしみこんでくる。
絶品に酔いしれてもらいたい。

ジョンだけの散歩2006-10-03

毎週火曜日は「そらん」は9時から訓練にお出かけだ。
だから朝の散歩にはジョンだけを連れて行く。
高齢犬の仲間入りとなる8歳のジョンは、
「そらん」とともに行く散歩のときは、騙しだましでも30分から40分歩いてくれる。
しかし、一頭だけの散歩のときは、近くの公園まで一所懸命に歩き、
ウンチと疾呼をそそくさと済ませると、一目散に帰ろうとする。
声をかけて、もっと歩くよ、といっても、聞く耳を持たない。
すたこらと家まで僕を連れて帰る。

ほんとは、もっと歩いて後ろ足に筋肉がついてほしいのに、
下僕体質の僕はつい、ジョンの好きにさせてしまうのである。

「そらん」の訓練は進む。飼い主は進歩せず。2006-10-03

今日の訓練も順調だった。
ただし、それは「そらん」に限ってのことだ。
少しでも僕の気合が低下すると、「そらん」はたちまち自由になる。
情けない話だが、下僕根性が抜けないのだ。

きょうは遠隔操作の指示をしてみた。
右から左、あるいはその逆に動かすだけなのだが、
「そらん」は指示を出す前に自分で判断して動き出してしまう。
ううーん、どうしたらいいのかねえ。
訓練士からはアドバイスをもらっているのだけど、
上手くできないでいる。

女信長2006-10-04

佐藤賢一  毎日新聞社  1800円

織田信長は女だった。
帯のキャッチに興味を引かれていた本だ。
店頭で見かけたときから、買う寸前まで行くも、見送り続けていた本だ。
奇抜な発想でかかれたものは、往々にしてつまらないものも多い。
確かに信長像には女性を想わせる点が多い。
色が白く、小柄で、執念深く、甲高い声。
女だといわれれば、なんとなく納得できるところがある。
だけど、男であったとしても、何の不都合のない特徴である。
なのに、女という設定で書くのは破綻しないかと想ったのだ。

信長 あるいは戴冠せるアンドロギュタス  宇月原晴明
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2006/08/30/504419
で、両性具有の信長という設定の物語を読んだから、
女信長という設定に不安を感じながらも読んでみることにした。

この作品は毎日新聞での新聞小説として発表され、
かなりな話題を提供した作品だということで、
物語としてはとても上手くまとめられている。
信長の女としての生き様・考え方は、なるほどよく作られている。
一気に読みきらせるだけの魅力は持っている。

信長が早くから鉄砲に着目したのは、非力な女ゆえ可能だったする点や、
既存の権威を否定したのも、女ながらに男性社会に挑んだからとする点は、
なるほど新しい見方である。

あまりストーリー設定について書くと、読む気がそがれるので、
これ以上は内容について触れないでいたいと想うが、
読み終えて感じた感想をあらわすと、触れざるを得なくなる。

まず、信長が女に戻るとき「お長」を名乗るのだが、
お長は懐柔のために、道三に処女を与え後援を得、
勝家に体を与えることで、信行から引き抜き、
長政には恋心を持ち、
光秀には安心を感じ、ついには男と女となっている。
帰蝶とは友達という関係であり、
お市にも女であると知られている。
光秀を除いても、これほど多数に女であることを知られているのに、
中でも長政が知っているのに、秘密が保持され続けている点が、
どうにもこうにも解せないという感想がある。
信長の子どもたちも、信行の子どもだったとしているのであるが、
これとて秘密を知るものは多数いるはずなのに、
信長が女であることは隠しとおせるのだ。
この物語が手放しで絶賛できないところは、そこにある。

しかし、信長として生きているお長が、女を捨て去ってしまえば、
この女信長の魅力が成り立たなくなってしまうのだ。
特に、光秀の本能寺の愚挙への光の当て方は、
お長という存在がなければ絶対に解釈不可能となってしまう。

作品の最後に配された家康と天海=光秀の会話もまた成立しえなくなる。

大きなほころびが生じているのにも拘らず、
「女信長」が成功しているのは、信長の先見性はお男としての思考ではなく、お長の思考によって生まれたとしたからに他ならない。

秀吉の妖怪性は、近年評判となった
「信長の棺」をはるかに越えている。
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2005/12/01/162677
秀逸。

が、僕としてはこの項で取り上げた作品の中では、
「信長の棺」が一番しっくりと読めて。

ネット犯罪から子どもを守る2006-10-04

唯野司   MYCOM新書(毎日コミュニケーションズ)  780円

インターネットが急速に浸透してきている現在、
親にとって子どもを守るために何をすべきかを説いている。

ネットにおける犯罪は多様化する一方だ。
子どもへのリテラシー能力の育成は、学校が果てしてくれると思ったら大間違い。
親が一番最初の防波堤として、子どもとネットの関係を見守る必要を、
本書ではくどいほど説く。
コンピューターを買い与え、ネット環境を提供した後、
子どものアクセスを管理しないでいる親が多い現状に警鐘を鳴らす。
フィルタリングソフトについてさえむしらないでいる親などは、
子どもがトラブルに巻き込まれることを考えもしない点で、
無責任だと指摘している。

長崎で同級生を刺殺した女児の事件を分析しながら、
リアルに友人と会話する能力がない子どもに、
自由にサイト運営させたりすることが、危険な状況かということをしらしめる。

ネットのありようをよく知らない親に対して、
子どもに何から教えていけばよいかという、
具体的な提言がなされている本書は、
子どもを持つ親への啓蒙書であるとともに、
ネット初心者すべてに対する啓蒙書である。

ひろしまドッグパークの向こう側で2006-10-05

広島ドッグパークが倒産したため、500頭近い犬たちが生死のハザマにあり、
その惨状を助けようと保護団体がネットで呼びかけた。
呼びかけに応えて、多くのボランティアが現地で活動し、
もっと多くの人たちから、物品支援と支援金が寄せられている。
おかげで多くの犬が死の寸前から生還した。
この活動に立ち上がった人々の存在は、
日本も捨てたものじゃないとのさわやかさを感じさせる。

が、保護活動で中心となっている方のあるブログでは、
意見が錯綜し、一部混乱が起きてしまっている。
誹謗中傷は見ていて不快なものだが、そういう投稿の問題ではなく、
文字表現が拙い点を捉えて、空疎な議論が起きているのだ。

保護活動は、純粋な気持ちからなされており非難されるべきではないが、
その活動の中で原因となった人間たちの行為に憤るあまり、
「地獄に落ちたらいい」とか「苦しめ、」といった言葉が使われていて、
そういう言葉を使うことをやんわりと否定した人が、袋叩きに近い非難を受けている。
もちろん、あの惨状を生んだ者たちの責任が追求されることは当然だ。
しかし、それを口汚くののしってしまうのは、やはり納得しかねるのだ。
非難するにも、不特定多数を相手にするネットの上ではルールがある。
そのルールを忘れることは、結局ドッグパーク運営を行っていたものと同じ品性に落ちてしまう危険性を秘めていると思うのだ。
2チャンネルを見てみると、現に同列視している人もかなり存在する。

大部分の人は、そうした読まれ間違いに気をつけて情報を発信している。
だからこそ、保護活動の中心にいる人たちには、
過激な表現を押さえて欲しいものだと思っている。
自分たちが書く文章もだが、レスに対しても注意を喚起して欲しいものだ。

今回の動きの中では、保護団体が保護団体を非難しているところもあった。
具体的なことが見えない一般人にしてみれば、
正確な経緯がわからないから、誤解が生じる。
そのことを示す書き込みは2チャンネルにやはりあった。
誤解の生じない表現を行うこと。それが果たされなければ誹謗中傷をするものたちに格好の材料を与えるのだ。
保護活動は誇ってよい。
だからこそ、常に冷静でいて欲しいと思う。
これはレスをつけているすべての人にも共通する課題なのだと感じている。

ボスがお泊りに来た。2006-10-06

母を姉が旅行に連れて行ってくれることになり、
ボスちゃんを不在の姉一家に代わりお世話することとなった。
10時ごろにボスちゃんを連れて家に帰ってきたところ、
「そらん」は大興奮。だけれど、ボスちゃんは少々迷惑顔しています。
もうすぐ12歳を迎えるボスちゃんにとって、
3歳半の「そらん」の遊んで攻撃に応えるのは、やはり相当にしんどいようです。
何せ「そらん」ときたらすぐにボスちゃんにマウントしに行きます。
ボスちゃんが腰を落として寝ていても、耳を舐めてみたり、
子犬がするような遊びへの誘いをするので、
ゆっくりとしていたいボスちゃんにとっては、うるさいのでしょう。

先ほど3頭いっぺんに連れて夜の散歩に行ってきました。
ボスちゃん12歳とは思えないしっかりとした足取りです。
10歳目前で行ってしまった「ごお」の分まで長生きして欲しい。
この調子だと13歳、14歳まで生きていてくれそうです。

写真は晩御飯の様子。仲良く並んで食べているでしょう。

ボスのお泊り2日目2006-10-07

ボスちゃんがお泊りしての2日目。昨日は「そらん」とあまり遊ばなかったけれど、
きょうは全開で遊んでいた。朝からどったんばったん、もう大変。
昨晩はベッドの上で寝ていたのはジョンだけだったのに、
麻に弱い僕がなかなかおきないものだから、
「そらん」が起こしにかかったのを合図に、ボスちゃんに火がついた。
ベッド上に2頭で乱入してきて、寝ている僕を踏みつけプロレス開始。
寝技に賭けるボスと、立ち技で挑む「そらん」。まるで猪木VSアリ戦だ。
ジョンは仲間に入れてもらえず、けたたましく吼えはじめ、ついでに僕をかみかみ。
遊ぶ2頭も勢い余ってか、僕の体のあちこちに歯をあてる。
逃げ出そうにも重くて動かず、しばらく踏まれたり蹴られたり噛まれたり。

ううーん。幸せである。こんな毎日が続けば、死ぬな<わし。

写真は夜の部が終わって仲良く寝ているところ。
もはやベッド上は収拾がつきません。
抜け毛は飛び散っているし、シーツはめくれ上がり、毛布や布団・枕は散逸。
ジョンは、やはり仲間に入れてもらえず、床で寝ています。

ボスのお泊り。最終日2006-10-08

ボスのお泊りも3日目。夜にお迎えが来る。
だから最終日は、一年ぶりにお出かけに連れて行くことにした。
とはいっても12歳。足腰もずいぶん弱っているようなので、
ドギーズパークの広いランより、パートナーズハウスのプールほうが楽しめるだろうと思い、3頭連れで湯浅に向かった。
熊野古道が世界遺産に登録されてから、湯浅方面はよく込むようになっている。
ましてや3連休。白浜へと向かう人も多いのか、吉備を頭に8キロの渋滞があった。
空いていれば1時間で着くのに、きょうは2時間もかかってしまった。

パートナーズハウスに着くと、ボスはプールの位置をしっかり覚えていた。
早速プールサイドに行き、水浴びしている。
だけど、以前なら泳ぎ続けていたのに、なかなか泳ごうとしない。
「そらん」が泳いでいても、泳ぐのを躊躇している。なんだかボスらしくない。
ジョンもここのプールでは、ほとんど泳ぐことがない。
どうしようかと思っていたら、恐々だが、ボスがプールに入った。
泳ぎっぷりを眺めていると、後肢を使っていない。前足だけで泳いでいる。
しみじみとボスの老いを知らされる。悲しいが、これが現実なのだ。
ジョンはボスが泳ぎだすと、一緒になって付いて泳ぎだした。
これもまた驚きだ。そのうえボスが初めてジョンとボールの取り合いをしている。
これまでジョンのことが見えないみたいにしていた態度が変わった。

いつもなら「そらん」にのみ付いて歩いているジョンがボスに付いて回っている。
それを煩がりもせず、ボスも許していた。

「そらん」は、茶ラブの女の子と走り回っては、プールに飛び込んでいる。
この子に執心の「そらん」は、目を離すと、この子の元に飛んでいく。
あまりにしつこく付きまとうので、3頭連れでランに入ったのだが、
1.6メーターの柵を野乗り越え、脱走していった。
飼い主の面目丸つぶれだ。

都合2時間遊ばせたあとシャンプーした。
シャンプーのことは別項で。

ボスのシャンプーで気づいたこと。2006-10-09

ボスをシャンプーして、その体の異変に気づいた。

「ごお」が病気を発祥して以来、ボスを洗うのは初めてだ。
だから2年ぶりに洗ってあげることとなる。
この2年間で、ボスの体の浮腫は増えていた。
脂肪腫もかなりあるし、しこりもかなりある。
全体で10箇所近い数になっているし、心なしか大きくなっているものもある。
腰の筋肉も落ちているとは思っていたが、
いざ洗ってみると、ジョンと同程度にしか筋肉がなくなっている。
12歳という年齢から考えれば当然なのかもしれない。
だけど、あの立派だった-ボスの腰が、腰骨が触れる状態になっていたのには、
洗いながら、落涙しそうになった。

13歳、14歳まで生きていて欲しいと思っているが、
浮腫かしこりのどれかが悪性でないことを祈るのみだ。
12歳のボスには、抗がん剤治療も手術も避けたい。
もちろん姉たちが最終決定することであるが、
高齢の身の上に、体の負担は与えたくない。

洗いあげ、乾かしながら全身を見ると、皮膚もかなり痛んでいる。
ビロードのようだった被毛だって、パサパサしてきている。
ボスの老いを目の当たりにし、少々動揺している。
あとどれくらいの間、ボスと一緒に遊べるのだろうかと。