名犬ランドルフ、謎を解く 黒ラブ探偵 12008-06-13

J・F・イングラード    ランダムハウス講談社   820円

米ミステリー。
なんといっても黒ラブが探偵役という一冊で、
犬、中でもラブラドール飼いにとっては感涙ものじゃないかと思う。

5歳の雄の黒ラブ・ランドルフには、
イモージェンという素敵な女主人がいた。
イモージェンはハンサムで魅力的な画家ハリーと、
2人と一人は楽しく暮らしていた。
が、イモージェンが突然失踪してしまい、
ハリーとランドルフは二人きりで暮らすこととなっていた。

ハリーは、才能あふれる心身の画家であったが、
イモージェンを失った悲しみから、
絵が描けなくなり、オカルトめいている。

そんなハリーが、ある降霊会いに招待され、
その場所で高名な作家が、
心臓発作で死亡するという騒ぎに巻き込まれた。

ランドルフは新聞にも毎日目を通し、愛読書が「新曲」という、
優秀な頭脳を持つっています。
ある日、失踪したイモージェンの日記に、
作家の死を暗示する一文と暗号を発見します。
ホームズに倣ってランドルフは、
作家の死の真相を暴くことを決意します。

ちょっと頼りないハリーのしりを叩きながら、
ランドルフは数々の断片を、
その知性と観察力、そして鼻の働きによってつなげていきます。

物語の進展に従い、次第に怪しげな人たちが現れてきますが、
それらの人たちの感情を、ランドルフの鼻が突き止め、
作家の死の真相をあぶりだしていくのです。
その結末は意外なものとなっていますが、
哀しいかな、鼻の効かないハリーは気づくことがありません。
米国では第2作が発表されているということなので、
この伏線が、どのような物語へと発展していくのか期待できます。

ランドルフの造形ですが、
先に述べたような知性に加えて、
運動不足で太り気味、ちょっと走れば疲れてしまう。
で、ダイエットに挑戦させられたら文句を言い、
からかわれると傷ついてしまうという人くささを感じさせます。
それから、道路のネバネバには理性を失うという犬らしさを示し、
排便に当たっては、慎ましくはにかむ木陰型だとか、
犬好きにとってはたまらない書き込みがされています。

著者自身、ランドルフという名のラブラドールを飼っているだけあって、
犬の描写の愉しいこと、楽しいこと。
ハリーに事件の謎を追わせようとするランドルフの苦闘にも、
興味が尽きませんが、
ランドルフの行動をオカルトを信じるハリーが
誤解していくところなども読みどころとなっています。

コメント

_ くまねこ ― 2008-06-14 00:25

「ウォッチャーズ」読みました。
なんかもう忘却の中に沈んでしまっていますが、
クーンツは結構好きな作家だったのです。

ホラー三羽烏、クーンツ、キング、バーガーの中では、
最も保守的な感覚で、人の善性が勝つというストーリーが好きでした。

この手の天才犬が主人公となる小説では、
おラフ・スティープルトンの「シリウス」という作品が、
そのストーリーの記憶もあいまいになっているというのに、
鮮烈な印象を持って覚えています。

超知性を有する犬の「シリウス」が、人と種族を超えた交流をしています。
シリウス自体は悲劇的な運命を迎えたと思うのですが、
その子孫たちは並の犬の振りをしていて、
人間世界に生きていくという結末だったように覚えています。

とっても良品なんですが、現在は絶版のようです。
犬好きには読んで欲しい傑作だったのですが。。。

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