天使な小生意気(全7巻)2008-08-14

西森博之  小学館  各600円

コンビニコミックで一気読みしてみた。
少年サンデー連載時ににも見ていたが、
最後のほうが同じような展開の繰り返しに見え、だるくなってしまって、
結末を見逃してしまっていたのだ。
「今日から俺は」が出世作となった西森氏は、
現在も「お茶にごす」という作品をサンデーに連載している。
僕は、西森作品が好みにあう要素が多くて気に入っているのだ。
それは出世作から一貫している。
だけど、どういうわけからか最後までは読みきっていないことが多い。
一作品くらいしっかり読んでおこうと思った次第。
コンビニ本で出ていたから、当時の印象がどう変化するかも見たかった。

「天使な小生意気」は、
誰もが魅入ってしまうよな超絶美少女で財閥の令嬢・天使恵と、
凶悪・強暴な男・蘇我源造が主人公。
それに恵の親友・美木、恵の級友普通の男・藤木、
男にしては可愛い貌のオタク・安田、
剣に生き武士道を極めんとする小林といった脇役を配する。

恵と源造の出会いは強烈だ。
高校入学の日、しつこく言い寄られる源造が女性を邪険に扱うと、
恵の逆鱗に触れやり込められることとなる。
その出会いが強烈なため、源造は恵に惚れ込んでいくことになるのだ。

恵は、その秀麗な容貌とは異なり、男言葉で話し、
類まれな運動能力で格闘センスも抜群。
正義感が強く、不正に目を瞑ることのできない性格だ。
子どものころから腕白であった。
謎の本から出てきた魔人に「男の中の男にしてくれと」願ったところ、
女にされてしまったと言い張っている。
恵を女にした魔人の本は、美木の情報によれば学園に関係がある。
男に戻してもらうため、恵は学園生活を始める。

源造と奇しくも同じ学校へ通うこととなった恵は、
やがて冒頭に挙げたメンバーたちに囲まれ、
「メグ」団を結成し、数々の冒険をしていくこととなる。

いろいろな敵対者も登場し、テンポよく物語が進んでいく。
西森氏特有のギャグも随所に見られる。

物語の結末のつけ方も爽やか。

源造と恵の関係が最後にはっきりと提示される。
この結末のつけ方は潔い。

源造の頬の傷の理由、何故そこまで強くなったかの理由まで明らかとなる。
「今日から俺は」の三橋と伊藤の良さは源造の中にある。

賢者はベンチで思索する2008-08-14

近藤史恵   文春文庫   571円

安楽椅子探偵物といってよい作品だ。

とあるファミレスでバイトする久理子は、
バイト先で一も同じ席にいる常連の老人に興味を持つ。
そういうバイトの日々の間に、
バイト仲間から犬を飼わないかと持ちかけられる。
以前より犬が欲しいと思っていたこともあり、
両親を説得して飼い始めることにしたのだが、
その犬は死んでしまったのだという。
がっかり死して公園でタバコを吸おうとしてみても、
うまく火が点かずてやさぐれているところに、
常連の老人から話しかけられた。
老人と話すうちに落ち着いていく。

もらうはずの犬が死んだから、犬のいる生活はできないと思っていたら、
母親が犬をもらってきた。
アンと名づけ可愛がっていたところ、公園で誤食し病院に行く羽目に、
そこで毒物中毒が最近多発していることを知る。

あんに苦しい思いをさせたものに怒りをもつ。
知り合いとなった常連の老人に公園で気づいたことがあればと依頼する。
そして、老人からある日一日付き合ってくれといわれ、
ブリーダー回りをすることになる。

そして事件は老人が解決する。


いや、楽しい。
この本は、ファミレスの常連、国枝老人を探偵役に据える連作短編集になっている。
さしずめくり子が語り部・ワトソン役。
ファミレスという世界を中心にして起きるちいさな事件を、
国枝老人が次々と解き明かしていくのだ。

この国枝老人というのが、また謎だらけなのである。
いつも独りで長時間同じ席でコーヒーいっぱいで粘る。
国枝老人を知る人によれば、少々ボケが廻ってきているという。
だが久理子と公園で会うときには頭脳明晰なのだ。
家を訪れてもひっそりとしていて、いるかいないかわからない。
どうやら何か秘密があるらしい。

本作品集には3つの短編が収められているが、
3つ目の作品で驚愕の事実が明かされる。
不意を討たれてしまいました。
国枝老人の印象の微妙な食い違いで伏線を張っていたから、
国枝老人の正体には驚かされなかったが、
その理由までは想像の枠外でした。

この作品集、お買い得です。
続編も出ているらしい。早く読まねば。