文学少女と死にたがりの道化2009-09-18

野村美月   エンターブレイン 560円

2002年からプロの作家として活躍している。現在も続く『文学少女』シリーズの記念すべき第一作が本書。『文学少女』シリーズは2006年から刊行され、現在11作目となる。年が明けるとと劇場アニメも公開されるということだ。高坂りと作画によりコミック化もなされている。
 『文学少女と死にたがりの道化』は、井上心葉という男子高校生の一人称で語られる。語り手じゃないが、主人公の一人として、タイトルにある文学少女・天野遠子が配され、他に脇役としてシリーズを通して登場し続けるであろう、遠子の友人らしい理事長の孫でオケ部部長にして美術を愛する姫倉麻貴、心葉のクラスメイトで何かと心葉に絡む琴吹ななせ、そして心葉のクラスメイト芥川あたりが重要人物になるようだ。本編には竹田千愛という心葉の下級生が登場し、今回の物語の中核を担う。千愛は紺作品以降も二人に絡んでくる重要な役割を与えられているのかもしれない。。
 主人公の二人については、遠子は摂食障害なのかなんなのか、普通の食事の味がわからず、紙に書かれた文章を食べるという設定になっている。ヤギではないのだが、紙に書かれた内容によって味が変化するそうで、遠子の食事は物語りそのものだということになる。心葉は妖怪と呼んでいる。貧乳で女性的な魅力に乏しいように書かれているが、実はたいそうな美少女のようで、麻貴は絵のモデルにしたくてたまらないらしい。ちょいと天然が入っている。心葉のほうは中学生のとき井上ミウ名で発表した小説が新人賞を受賞してしまい、そのペンネームの所為で謎の覆面美少女作家といわれた過去が明らかにされている。
どうも井上ミウを巡っては、作中で美羽という元恋人との間で事件があり自殺したようにほのめかされている。それがあって、強い人間忌避を持っているとされているが、説明ほどの暗さは前半では見せていない。後半に入って美羽の存在が明らかになっていくに従い、心葉の傷のありかが示されていく。どうやら遠子といることで微妙にバランスが取れているということのようだ。中性的な面立ちの美少年という設定になろうか。

 さて、主人公の二人は、他に部員のいない文芸部に所属している。本や手紙を食べるという奇癖を持つ遠子は、心葉に本をちぎって食べていることを目撃され、部員にした。それ以来、過去のよい本の合間合間のおやつを遠子のために心葉は書き続けている。そういう平和な日常を、遠子が企んだあなたの恋叶えます事業を見て跳び込んできた武田千愛のお願い、ラブレターの代筆をしてほしいとの願いで破られる。やむなく代筆をすることになった心葉だが、その相手が校内にはいないと知り、いったいどうなっているのか訝しむことに。やがてわかってくる事実。千愛の相手は10年前に死んでいる。
 学園のミステリアな謎に文芸部は挑戦する。

 冒頭にポールギャリコの作品に触れていたり、物語の核心部分には太宰の『人間失格』が絡んでいたり、幾多の書籍を紹介することにもなっている。もう少し重心を落とした物語に再構成してみたらどうかと、やや残念な気がしてい