探偵・花咲太郎は閃かない2011-11-29

入間人間  アスキー・メディアワークス   530円(税別)

入間人間という作家は、西尾維新より少しましだけれど、
僕が嫌いな作家である。
最初に読んだのは『660円の事情』だった。
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2010/08/05/5268755
この作品は面白いと感じていたのだが、
この後に読んだ『うそつきみー君と壊れたまーちゃん』が、
ほとんど絶望的なまでに、大嫌いな世界を展開させていた。
西尾維新と同列の、
理由のないお手軽で意味のない殺人がてんこ盛りの、
人が悪人でも善人でもない、非常に不安定なものとして描かれていく。
こんな作品が好きになれるわけがない。
こんなのが売れる世の中って絶望的な世界と思うのだ。
だからほんとに嫌いなのだ。

なのに読む。

人というのは訳のわからない衝動に支配されるものだと、
しみじみ感じる。

語り部は、犬猫の捜索がメインの探偵・花咲太郎となる。
彼の努める探偵社は司法書士事務所を併設する、
たまに浮気調査の依頼が入れば大事件に属するという程度の事務所だ。
また彼は13歳の美少女・トウキと暮している。
太郎は、その性癖としてロリコンである。
隠そうとしないし、同病者とは異なり、
ロリコンの追求にいそしみ少女を手篭めにはしない程度に常識的である。
彼の探偵としてのポリシーは、
名探偵のように類まれな推理力など必要なく、
地道な調査が出来る体力が基本というものである。
だから、名探偵のような閃きなど持ち合わせていないと言い張っている。

ところが作品を読み進めるとわかるとおり、結構推理力は高いのだ。
まあご都合主義的ではあるが。
彼が自らを名探偵でないと言い張るのには、
トウキという存在が原因となる。
このトウキ嬢は直感だけで犯人がわかるという異能者なのだ。
異能はそれだけに留まらず、
彼女の行くところには死体が生れるようである。
根っからの探偵体質の持ち主ということだ。

さて、殺し屋家業の木曽川、同僚のエリオット、所長の飛騨牛と、
どこか非常識な日常を展開するだけの物語になっている。
ここに豊かに成長する人間などはいないし、
豊かな関係なども存在しない。

ただ無為であるだけだ。