ずうのめ人形2018-12-17

澤村伊智  角川文庫  760円

「ぼぎわんが、来る」で、なんか判然としないままでいたので
続けて読むことにした。

やっぱりなじまない。面白いのだけれど、誰かに進めようという気にはならない。
モダン・ホラーにするならするで、古典的な階段模様にするならするで、
どちらかに振ってくれたほうがしっくりくる。

最後の着地点から逆算して書いているのか、
登場人物達の行動・関係性が無理に隠されているため、
恐怖小説の側面よりミステリ色が勝つ。
それはそれでいいのだけれど。

作中作のありかたが叙述トリックになっていて
情報交換していないにもかかわらず、最後に運命を共にする二人の在り方に
面白く読み終えられるはするが、引っかかりを覚えてしまう。

新しさと古さが同居しているという評価ができるのだけれど、
どちらから見ても消化不良になっている感がしないでもない。

それにしても、澤村氏の描く人物は歪んだ人格が多い。
今回の登場人物たちも、呪いの主格を筆頭に歪んでいる。
復讐者も歪んでいる。難を逃れた語り手も、その後輩も、
そして前作から登場する真琴と野崎も、歪んでいる。
作中作で語られている美晴も、相当に歪んでいる。

事件そのものの恐ろしさより、この人格のゆがみこそが
この人の持つ特性なのかもしれない。
怪異を描くのではなく心理サスペンスに向かったほうがいいのかと思う。

今作も、面白いし、恐ろしさも読み応えもある。
この一連のシリーズといいって言い短編集も出ているようなので、
たぶんそちらも読むだろう。
それが僕の評価ということである。なんかしっくりしないけれど。