でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相2019-03-07

福田ますみ   新潮文庫   590円

福岡県で起きたとされていた
教員による生徒いじめj事件のドキュメント。
当時ワイドショーなどでも取り上げら荒れ、
いじめを行ったとされた教員はバッシングされた。
のちに教員の不法行為のほとんどは否定され、
保護者の異常性が暴かれたことにより、
モンスター・ペアレントがいると世間に認知させた。

事件がテレビをにぎわせていたころ、
そんな教員が存在するはずがないと思っていたが、
その後に似たような事例が告発され、いくつかは事実としてあった。
福岡の「殺人教師」は冤罪であったものの、
教員由来のいじめが深刻な事態を生んでいることも事実のようだ。
だからいまだにこの事件も事実であったとする向きもいる。
そうした誤解を持つ人々は本書を読むべきだろう。

モンスター・ペアレント、略してモンペは、実は以前からあった。
それは有力者であったり、同業者であったり、
反社会的勢力に近しいものだったり、
ある種の圧力団体に属していたり、
子供への特別扱いを承諾させるか、
謝罪を得るための力の行使であった。
だから誠実に向き合い続ければ、手打ち可能な存在であった。
この書籍でみられるような目的が迷走する保護者というのは、
これまで聞き及ぶことのなかった新しい形と思う。
結局は裁判で慰謝料を求めていくのだから、
金目かと思わせられるが、それは彼ら自身の考えというより、
結果として周りにそそのかされていったのかと思わせる。
モンペが初めからモンペではない。周囲が形作る。

この事件の保護者も、彼ら自身が自己の責任を回避するため、
小さなうそをつく。
その嘘に自らがからめとられていく。
最初の苦情に教員が引いて言い分を認めたこと、
相手の話を猛進ししなくてもいい追従をする。
それがい所yな攻撃の端緒につながる。
相手が引けばさらに主張を自己増殖させ、
徐々に過激な主張をしていく、
そういう状況になっただけといえるように思える。
自らのウソを信じ込み周りを巻き込んでいく。
二親そろってそういうありかたをしているから、
だから見る見る間に事実は極端になっていく。
そこに報道がからむ。取材力を失った記者たちが、
さらにうそを増殖させていく。
教員が引いたこと、学校が引いたこと、
教育委員会が認めたこと、
弁護士がついたこと、それらがますます彼らを暴走させた。
彼らの頭の中で、彼らの主張は事実としてある。
都合のいいように記憶は改変されるものにすぎない。

それらの過程が丁寧に述べられていることが興味深い。

2000年代以降にはだれもが簡単に情報発信が可能となることで、
そういう事実を必ずしも反映していない情報が氾濫している。
そもそもの情報発信者が、自分の情報がもとに変容した情報を見て、
さらに誤情報を拡大させていくこともある。
本来情報の正確性を担保するべきマスコミが、
そういう情報をうのみにすることも数多い。
新聞などで紹介される活動などでも、その活動現場にいるものとして、
その紹介なら提灯でしかないじゃないかと思ったことも多々ある。
事実の認定は、本当に三塚しい。

この事件を報道したマスコミからは、
ほとんど反省など示されていない。
著者が事実を突きつけても、自分たちの正当性を主張し続ける。
謝罪することが悪であるかのように。

それくらいの覚悟しかない、正義を標榜する記者たちが冤罪を生む。
今日もまた報道の姿勢による「いじめ」が起きていないか。
そのあたりを考えると、恐ろしいと思う。