信長島の惨劇2021-01-03

田中啓文

うーん、この歴史を題材にしたミステリを表現する言葉が見つけられない。
バカミスとするのが適切なように思うが、
何やら、知られている史実に合わせるためにか、
アクロバティックな仕掛けをし過ぎていて、
さすがにそれはないじゃんか、と興をそがれた。
が、放り出しそうになりつつも、最後まで読ませたのだから、
面白いとは感じていたのだろう。
読み終えた今は856円返して欲しいと思っている。

本能寺の変の原因が、この書の肝になっているわけだが、
その入れ替わりがあったとしたら、
互いにもっと違う動きをしていたに違いなく
この物語のようには進みがたい。
信長は明智家を重視せざるを得ない立場になり
明智は信長を滅ぼすことだけはできなくなったはずになる。

ま、そこを見過ごすことができるなら、
エンターテイメントとしては成り立つ。多分。

しかし、最初の30ページほどで、
その入れ替わりを意識させる露骨な性格描写は
これでもかというほど突き付けている。
ならば読者にはちゃんと初めに種明かしをしておいたほうがいいよな。

田中さんはベテラン作家のようで、著書の数は多い。
主戦場はホラー系のようだから、読んでいても不思議はないのに、
読んでいたとしても不思議ではないのだが
タイトルを見てもピンとこない。
全く記憶にない。だから印象に残るものではなかったのか。
もしかしたら初めて著作を読んだのかも。

山崎の戦いを終えた後、清須会議までの間に、
死した信長の書状により、
秀吉、勝家、家康、高山右近の四将に、
森蘭丸、千宗易、弥助、細川ガラシャが
三河湾の小島に招き集められた。
四将には、それぞれ秘め事があり、
出所不明の書状であれ応じざるを得ない。
そして姿を現さぬ信長により
次々に見立てによる粛清がなされていく。

でたらめなんだが、つじつまだけは合うという離れ業作品。

個人的には、買ってまでして読むのはやめたほうがいいと思う。
借りて読むなら腹は立ちません。
好き好きだとは思うが、僕には何の評価もできません。
SFとしても、ミステリとしても中途半端です。
クリスティの「そして誰もいなくなった」をオマージュしたというが、
名作が迷作にされてしまっては悲しいのだ。

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