卒業したら教室で2021-04-09

似鳥鶏

「高校生探偵団」とも「市立高校」とも称されるシリーズの最新作。
5年ぶりに出た第8集にあたる。
これが最終巻になるのかと思っていたが、まだ続くようだ。

似鳥鶏は2007年に「理由あって冬に出る」(市立高校生シリーズ第1作)が
創元推理文庫に収められ、以後同シリーズ書き継いできているほか、
2012年に始まった「戦力外捜査官」シリーズがテレビドラマ化されヒットした。
経歴が14年に及ぶ割には作品集は30冊ほどで、あまり筆が速い人ではない。

市立高校生シリーズは、米澤穂信の「古典部」シリーズと同類と見做せ、
日常の謎を解き明かしていく軽いミステリといえる。
ライト・ノベルといっていいと個人的には思っている。

古典部にしても、小市民にしても、マツリカにしても、
高校を舞台にしたミステリは頭抜けた探偵役がいて、
とても魅力的なヒロインが必ずいる。
恋愛模様が、友情が、背景にあるのも言うまでもない。

このシリーズの感想を過去に残していなくて、
第8作目の本作が初めてということになった。
過去作を読んでいなければ面白味は半減以下だと記しておく。

市立高校に神出鬼没の「兼坂」さんが出現した。
閉じられたCAI室で電源の入っていないパソコンを操作する人を見た。
8番目の七不思議。
葉山君に秋野さんが相談を持ち掛けてきた。
OBの伊神さんの助けを得ながら、
葉山君は、まもなく卒業式を迎える柳瀬さん、親友ミノ君たちと捜査を開始する。
葉山君たちは謎を解き明かすことができるか。
それから葉山君は柳瀬さんに思いを打ち明けられるだろうか。
残された時間は3日間しかない。

今作は、作中作を配し、現在視点と、12年後のミノ君と葉山君の会話と
凝った構成にしている。
それらを「まえがき」と「あとがき」に挟み込み、
さらに第6章が足されている。

メタ小説っぽくもなっているわけだ。

「兼坂」さんの謎以外に、作中作の作者は誰かも謎の一部になる。
さらに伊神さんの行動の謎も明らかにされていて、
ここまでの作品のありようがきっちり収められている。

この事件が終わったことで葉山君は3年生になる。
伊神さんの後を襲ぎ風紀委員になった葉山君の後日談が待っているようだ。
伊神さんの妹天童翠が葉山君の後を継ぐのだろうなという予感と、
新たな事件が起こった時、葉山君、ミノ君、翆ちゃんの捜査に
OGとなった柳瀬さんがかわいらしく絡んでくるんだろうなとも予想する。
あと1作なのか、2作なのかわからないが、
できればササっとシリーズを完結させていただきたいものだ。

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