余命3000文字2021-04-14

村崎羯諦[ムラサキギャテイ]

タイトルだけで買ってみた。
タイトル買いをしたら後悔することが多いのだ。
この作品集は宙ぶらりんな評価になる。
買わなきゃ良かったとは思わないが、
買って良かったとも思えない。実に中途半端。
収められた作品には目を見張らさせるものもあるので
小説らしい小説が出版されるのを期待しておこう。

著者は1994年生まれの男性。「小説家になろう」出身ということだ。
なろう系というのか、素人が作品発表しているので、
感性にきらめきを感じるものもあれば、
他人の鑑賞に堪えられないものも多い。
ライトノベルに多数が作家デビューしているのだが
大半は漫画のような小説で、無理してジャンル分けすれば
ヒロイック・ファンタジーや学園小説のようなものが多いのだが
たまに三秋縋がごとき毛色の違う作品発表がなされる。
この村崎羯諦も、そういう作家だ。(とされているようなのだ)

なろう系の作家は、もともとプロ修業した人たちでないため
文体は未完成なだけではなく、背伸びした単語を使ってみたり、
有名作家の文を流用してみたり、名作の引用を多用したりと、
結構“痛い”作品を出している。
おおよそ設定も似たり寄ったりで、冒険ものなら異世界転生で無双する話、
冴えない男がもてまくる話、この辺りが王道となる。

本作は純文学というジャンル分けになるらしい。

好感が持てるのは、無理して背伸びせず平易な表現にしていること。
作品の料理方法が意表を突いてくるところだ。

帯には「5分で読めてあっと驚きわっと泣ける」とあるが、
数作に帯の惹句に偽りなしと思わせるものの
一冊読み終えての感想では、そこまでのものとは思えない。
2割ほどに驚きがあったのは確かだが、
大半はアイデア倒れであったり、ひねりが未熟との印象が残った。

全部で26作が収められたショート・ショートなので、
アイデア自体は優れているとは思うが、
もう少しボリュームアップして書き込んだならいいのにと思わせる。
もの足りない。

これまであまり見かけたことのない発想と落ちなので、
楽しく読ませてもらったのだが、楽しいだけで余韻はない。
長めの作品が待たれる。
三秋縋以上に化ける可能性はありそうだ。

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