深川黄表紙掛取り帳2007-03-03

山本一力   講談社   629円

江戸の市井ものである。5編からなる連作短編集である。
定斎売り・蔵秀と蔵秀にほれている男装の絵師・雅乃、文士・辰二郎、飾り行灯職人・宗佑という江戸・深川の若い衆4人が主人公となる。
時代は元禄バブル期であり、将軍綱吉による悪法『生類憐みの令』が出されている上、
農本主義が疲弊し、商業が急速に発達し、凄まじいインフレが起こっている。
悪名高い側用人・柳沢吉保もいれば、伝説の豪商・紀伊国屋文左衛門が登場した時期でもある。

深川の4人衆は、それぞれに職業のようなものを持っているが、
その特技を集めて、金が絡んだ厄介ごとを解決していくという裏家業をしている。

『端午のとうふ』では、使用人が誤発注したため、大豆を大量に在庫として抱えた大店からの依頼で幕を開ける。
大掛かりに仕掛けを拵え、正月の縁起物として豆を売り出すことにし、
渡世人やら、辻かごの元締めなども引き入れ計画を練る。
『招福大豆』として一升300文で売り、500にひとつ金の大黒を混じらせているという運試し、
ちょっと前から話題を先行させ評判にして、期待を煽る。
試みは大成功、大豆の在庫はすべて処理できた上、利益まで上がった。
ところがその豆が粗悪品だった。
何故、そうなったか調べるうち、大豆の誤発注が詐欺だったと知れる。
改めて、詫びを兼ねたビッグイベントを計画し、問題を解決に導いていく。
その見事な収束振りが読ませる。
『水晴れの渡し』は雅乃が新興商人の太田屋の総量息子・由之助と見合いし、
野心溢れる男の『行き遅れのでかい女』と呼ばわれるところから始まる。
蔵秀も雅乃には惹かれているのだが、なぜか距離を置いている。
そのため二人は、両思いなのに、結ばれていないのだ。
一方、『端午のとうふ』で困りごとを解決した縁で、
蔵秀は小豆問屋の内紛に巻き込まれている。
どうも小豆問屋の内紛には雅乃の見合い由之助が絡んでいるようで。
蔵秀たちは、あこぎなやり口の太田屋に対し義憤を感じ、
雅乃之あだ討ちのために、近々渡し舟が橋ができて廃止され層という極秘情報を得て、
それを元に太田屋を懲らしめる策を立てるのだ。
痛快仕事人。

以下、蔵秀に目をつけた紀伊国屋文左衛門からの依頼のなぞを追求し、
紀伊国屋に逸し報いる『夏負け大尽』
太田屋への仕掛けがほころびかけたところを、
文左衛門を巻き込みほころびを繕う『あとの祭り』
そして最後に、悪名高い柳沢吉保、紀伊国屋文左衛門の、
権力者としての顔のそこにある人情味を描く『そして、さくら湯』

市井の人々の生き様にスポットを当てた佳品が続く。

ミステリ的な要素もふんだんで、楽しめる時代小説である。

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