うつろ屋軍師 ― 2021-03-02
箕輪諒
最低の軍師
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2019/01/18/9026372
を読んで以来の箕輪作品だ。
発表順としてはこちらが先で、デビュー作にあたる。
最低の軍師は意外な題材だったが、こちらも負けていない。
織田5将(柴田・明智・羽柴・滝川・丹羽)の中では地味な、
華々しい戦績こそないが、重要な政策をこなしてきた丹羽長秀と、
継いだ長重、家臣にスポットが当たる。
豊臣政権樹立には丹羽長秀が大きな役割を果たしたが、
長秀没後には100万石を超えた領国は4万石まで減封される。
その後12万石まで加増され関ヶ原の役では西軍につき前田軍をけん制、
西軍敗退のため改易の憂き目を見る。
立花宗茂が西軍にくみしながら大名に復帰したように、
丹羽家も大名に復帰する。
ただその在り方は相当に異なる。
丹羽長重という主のありようが、それを叶えたとする。
この小説は丹羽家中にあって「空論」屋と呼ばれた江口正吉が主人公である。
気宇壮大な策と言えば聞こえがいいが、
現実化させられない大ぶろしき述べる癖がある。
うつろ屋と呼ばれ周囲を呆れさせている。
だが長秀をはじめ、秀吉からもその才を愛されるのである。
策が策として成立させ得る者にとっては正吉の着眼は役に立つ。
丹羽長秀の思考は、およそ戦国武将として異質である。
秀吉もまた従来の武将の枠に収まらない思考を持つ。
うつろ屋とされていた正吉は軍師として大きく育つ。
だが、やはりどこかで画餅のもろさを持っていた。
それが丹羽家改易につながることになる。
何を老いさせても非凡な成果を見せた長秀から長重に代替わりし、
豊臣政権から力を削がれていく丹羽家。
城好きの主は、臣下を大切にし、減封・改易にあっても
再仕官先を確保するなど、手を尽くす。
その行為が丹羽家を大名に復帰させる。
正吉も越前・結城秀康に仕えることとなる。
時がさらに過ぎゆき大坂の陣に丹羽長重は参陣している。
他家に仕官した旧臣たちの働きかけで、
諸大名家が嘆願してか1万石で大名復帰していた。
正吉は越前家の1万石を捨て長重のもとに参じる。
そして大阪方の奇襲を読みひそかな功を立てる。
秀忠の知るところとなり長重はお伽衆として重用される。
長重の城に対する造詣の深さと、正吉の軍立て直しの成果があいまり
丹羽家は加増されていく。
改易されたものの10万石を得るまでになり、幕末まで丹羽家は続く。
正吉の子孫も丹羽家家老職を歴任する。
長重・正吉の関係がさわやかな読後感を生む。
面白さも保証できる。一級品と思う。
最低の軍師
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2019/01/18/9026372
を読んで以来の箕輪作品だ。
発表順としてはこちらが先で、デビュー作にあたる。
最低の軍師は意外な題材だったが、こちらも負けていない。
織田5将(柴田・明智・羽柴・滝川・丹羽)の中では地味な、
華々しい戦績こそないが、重要な政策をこなしてきた丹羽長秀と、
継いだ長重、家臣にスポットが当たる。
豊臣政権樹立には丹羽長秀が大きな役割を果たしたが、
長秀没後には100万石を超えた領国は4万石まで減封される。
その後12万石まで加増され関ヶ原の役では西軍につき前田軍をけん制、
西軍敗退のため改易の憂き目を見る。
立花宗茂が西軍にくみしながら大名に復帰したように、
丹羽家も大名に復帰する。
ただその在り方は相当に異なる。
丹羽長重という主のありようが、それを叶えたとする。
この小説は丹羽家中にあって「空論」屋と呼ばれた江口正吉が主人公である。
気宇壮大な策と言えば聞こえがいいが、
現実化させられない大ぶろしき述べる癖がある。
うつろ屋と呼ばれ周囲を呆れさせている。
だが長秀をはじめ、秀吉からもその才を愛されるのである。
策が策として成立させ得る者にとっては正吉の着眼は役に立つ。
丹羽長秀の思考は、およそ戦国武将として異質である。
秀吉もまた従来の武将の枠に収まらない思考を持つ。
うつろ屋とされていた正吉は軍師として大きく育つ。
だが、やはりどこかで画餅のもろさを持っていた。
それが丹羽家改易につながることになる。
何を老いさせても非凡な成果を見せた長秀から長重に代替わりし、
豊臣政権から力を削がれていく丹羽家。
城好きの主は、臣下を大切にし、減封・改易にあっても
再仕官先を確保するなど、手を尽くす。
その行為が丹羽家を大名に復帰させる。
正吉も越前・結城秀康に仕えることとなる。
時がさらに過ぎゆき大坂の陣に丹羽長重は参陣している。
他家に仕官した旧臣たちの働きかけで、
諸大名家が嘆願してか1万石で大名復帰していた。
正吉は越前家の1万石を捨て長重のもとに参じる。
そして大阪方の奇襲を読みひそかな功を立てる。
秀忠の知るところとなり長重はお伽衆として重用される。
長重の城に対する造詣の深さと、正吉の軍立て直しの成果があいまり
丹羽家は加増されていく。
改易されたものの10万石を得るまでになり、幕末まで丹羽家は続く。
正吉の子孫も丹羽家家老職を歴任する。
長重・正吉の関係がさわやかな読後感を生む。
面白さも保証できる。一級品と思う。
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