春一番2021-04-04

春一番といっても、キャンディーズでもなければ、芸人でもない。
まして季節の話でもない。

1971年から1979年にかけて天王寺野外音楽堂で行われた、音楽フェス。
僕は1975年、1977年、1978年、1979年を聞きに、見に行った。
そのうち都合8日分をデンスケとKD4 で生録していた。
春一番は、実におおらかなお祭りで、
ステージそっちのけで宴会状態の観客がいれば、
入退場自由なのでお気に入りの演奏者のステージが終われば
新世界の串カツ屋まで走っていく人がいたりした。
近場の酒屋でビールに日本酒を仕入れてくる人もいた。
今どき考えられないことだが写真撮影も録音もおとがめなし。
頑丈な三脚にカメラを固定して撮影しているし、
中には38持ち込んで高性能なマイクで録音するつわものもいた。
この前後に発売されたデンスケは乾電池で動く画期的な製品だったので、
持ち込んで録音する人が多数いた。
だから会場内にマイクが林立する光景があった。
僕もそのうちの一人だった。

春一番の出演者は、ビッグネームもいれば、無名の人もいる。
故人となった高田渡、加川良、西岡恭蔵、
今も歌い続ける大塚まさじ、古川豪、いとうたかお、有山淳司、シバ
ほかにも加藤登紀子、上田正樹、竹内まりや、中川五郎、中川イサト、
松村正秀(チチ松村)などなど多彩な顔触れがステージに立った。

一連の音源化作業も大詰めが近づいてきて、
ライブ録音にも手を付け始めている。
春一番は75年と77年、78年をデータ化し終えた。
客席から録っているだけなのでお世辞にもいい音とは言えない。
マイク近辺の人の会話が入り込むし、
時には酔っ払った聴衆がマイクの前でパフォーマンスし始める。
風が吹けばマイクは風にゆすられ大きな雑音を記録する。
デッキがあるうちにとCDにしたものを十数年ぶりに聞き直した。。
データ化にあたっては、元の音源の不良部分の習性も少し行った。
曲ごとに切り分けるときにチューニングやMCも切り離した。
それでも15時間ほどの長さになった。
78年はごく一部を除いてテープを廻しっぱなしにしていたからそうなる。
1975年からでCD17枚分にもなるのだから。
(1979年は単年度分でCD18枚分に及んでいる)

肝心の演奏内容だけれどこれは、同時代に生きてきた人にとっては、
テレビの中での華やで楽しげで無害なメジャー文化より、
アンダーグラウンドと呼ばれた文化に魅かれていたものにとっては、
自分の根っこを再発見できるもので、単なる郷愁に終わらない。

1997年に復活した春一番。2020年からは中止が続くが、
さまざまな噂では70年代のカオスが匂うお祭りになっているという。
コロナの時代が落ち着き、また再開される時が来るのを待ちわび、
その時にまだ野外コンサートに耐えられる自分でいられるなら、
行ってみたいな。残された時間は長くない。チャンスよあれ。