ワゴンに乗ったら、みんな死にました2022-04-18

黒田研一

最後まで読んで、それでバカ話にもなっちゃいないと文句を言う。
そういう類の稀にみる駄作じゃないかと思う。
密室で起きる連続殺人であり、その事件を起こす犯人の動機と手段、
被害者の集まる経過と、それぞれの罪、
もう少しすっきりと納得させてくれるのなら、
楽しく読み終えることができたのかもしれない。
決して秀作とは思わなかっただろうけれど。

この著者の作品は「カンニング少女」を過去に手に取ったことがある。
珍しく途中で中断したまま放り出した小説である。
なんかアイデア自体はよいのだけれど、ご都合主義的であり、
物語に同調できずにページを追うのがしんどくなった。

今回は最後まで読んだ点では、まあ及第点なんだろうか。
でも最後までなにひとつとして納得できる代物にならなかった。

友人に食事東京案内を頼まれ、就職面接に呼ばれて、
理由は様々だが呼び出された場所で薬物を吸わされ意識を失い
ワゴン車の中に拉致された6人の男女。
携帯電話などは持ちさられていて
ワゴン車は仕掛けがあるらしく外に出られない。
そして犯人からのメッセージが。
決められたルートを制限時間内で移動せよ。
時間をオーバーすれば仕掛けた爆弾が爆発する。
無理にこじ開け脱出しようとすれば、やはり爆発する。
時間内で指示をこなせれば生き延びられるかもしれない。
こうして地獄のドライブがスタートした。
途中でさまざまなアクシデントに会い、一人、また一人命を落としていく。

ドライブ中に6人の接点が少しづつ明らかになる。

犯人がどのようにして5人を特定し、どのようにして集めたのか、
まったくもって謎のままだ。手段は書かれているが無理がある。
ワゴン車は中型車という表記が途中であるが
トラックでなければバス(マイクロ)が考えられるが、
ドライブ中の表現で1.8メートルの高さや幅にぎりぎりとあり、
ハイエースなどが想定されているようにも思う。
なのに自由に広さを変えるワゴン車の構造にびっくりだし、
ワゴン車に仕掛けられた罠もでたらめに思う。
装置としては自作できるだろうが、
物語で示されるほどの改造なら、かなりな技術がいる。
絶対に脱出できない構造なんて無理がありすぎる。
度重なる衝撃で壊れないワゴン車にも驚きだ。
けもの道を走破する能力にも無理がある。装甲車かいなという感じだ。
タイミングよく作動するわなの存在で、
読者はすぐに気づくはずだ、犯人は集められた6人の中にいる。

最後に明かされる犯人の動機にも、まるで共感できない。
拡大自殺を企んだにしても無理がありすぎないか。
ミステリとしては失敗しているだろうし、
サスペンスとしても共感できない。
ましてホラーでもない。
せめて「王様ゲーム」くらいのレベルが欲しい。

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