カチカチ山殺人事件 ―昔話×ミステリー・日本編―2021-03-09

伴野明、都築道夫ほか

伴野明、都築道夫、戸川昌子、高木彬光、井沢元彦、佐野洋、斎藤栄という、
旧世代の作家が昔話を題材にした作品を集めたアンソロジー。
井沢元彦以外の6名は故人となるか引退状態にある。

元は1989年に刊行された「おとぎ話ミステリー傑作品」で、
2021年に改題・新装された作品集である。
名を挙げている作家順に
かちかち山(カチカチ山殺人事件)1979 猿かに合戦(さるかに合戦)1977 
怨念の宿(舌きりすずめ)1977 月世界の女(竹取物語)1949 
乙姫の贈り物(浦島太郎)1972 愛は死よりも(桃太郎)1987 
花咲爺さん殺人事件(花咲爺)1978?が収められる。
怨念の宿が70ページくらいとやや長いが、他は40ページまでの短編集だ。

昔話を題材にしているとはいっても元ネタの料理の仕様は様々だ。
それぞれの調理法を楽しむとよい。
設定だけを利用した別物もあれば、物語の前奏部に充てるものもある。
元の物語を忠実に現代に移し替えSF要素を省いたものもある。
それぞれに興味深い物語を作り上げている。

文体など、今の時代には合わない点はある。
社会構造も変わってしまい、なぜそうなるのかわかりにくいものもある。
それでも作家のイマジネーションで、ここまでの面白いものにできる。
こういう物語はもっとミステリアスなものになってよい。
作家から読者へ、何が下敷きか当ててみよ、という挑戦だってできるだろう。
昔話を題材に、もっと物語が描かれていいと思う。
(なんて書いてみたが、実はそういう著作はごまんとあるのだ)

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