スクールカースト復讐デイズ ―正夢の転校生―2021-04-17

柴田一成

柴田一成は映画監督や映画企画やにプロヂュースをしているそうだ。
主な監督作品には最近では「がっこうぐらし」があり、「笑う大天使」なども手掛けた。
「リアル鬼ごっこ」が最大のヒット作なようだ。

映像での仕事ぶりを見れば、学校生活を主戦場にしている。
で、小説も学校が舞台になっている。

帯で山田悠介が言葉を寄せている。
「ラストの衝撃に、息を吞むこと間違いなしです」
ちょっとあおりが過ぎるように感じた。
自作品の映像化に取り組んだ人への言葉ということで
幾分か割り引いて判断したほうがいいかな。

などと書いたけれど、結構気に入ってます。

「岩崎が自殺したって」の一文から物語が始まる。
それが夢であったと知り、いつものように登校すると、
教室で机上に花が添えられ悼む級友たちがいる。
夢が現実になったかと焦っていると、葬式ごっこだったと種明かしされる。
岩崎君は颯太の親友だった。彼はいじめに会い不登校になっていた。
いじめられる岩崎君を見て見ぬふりしてきたのが颯太だ。

その日以降、颯太は予知夢めいたものを見るようになる。
美少女が転校してくる夢を見、翌日現実となる。
踊る心で彼女を見つめていると、いきなり怒声を浴びせられる。
以後、夢で見ることが次々翌日に現実化していく。
周囲と融和することを拒み続ける彼女はいじめの対象となる。
それを予知夢として見るのだ。

颯太は彼女へのいじめを防ごうと足搔く、
しかし足搔けど、足搔けど、状況は悪くなるばかり。
そして自分もいじめの対象になってしまう。

困惑し道を見失ったの彼が頼ったのは、
かっての親友・岩崎君だった。

岩崎君の助言を受けながら抗う颯太に活路があるか。

そういう感じの物語なのだが、実は3/4が過ぎたあたりで
夢の正体が明かされ、夢と現実が逆転する。
だけでなくもう一つの現象が起こっていたと説明される。
この辺りのファンタジーをどう捉えるかで読者の評が分かれそうだ。

個人的に希望を持った話にするための作者の設定というか、
工夫であり、ちょっとずるい手だなと感じはするがアリだと思う。
また颯太が、自分自身が窮地に落ちる危険を承知しながらも
執拗に彼女を守ろうとする動機の説明としてあり得るとも思う。

だが、さすがに事件が起こっているのに変わらなさすぎる学校に
ちょっとばかり作者は意地悪で批判的に見過ぎているのかと映る。

まあ、こまごまとした感想は置き、非常に面白い物語になっている。
中学生の心の動きにも納得するし、
いじめの諸相のある面はよく表現できている。エンディングも希望が持てる。

ただ学校のとらえ方が、悩みながら対処している教員の存在があまり見えず、
とても残念な気がしている。(一人だけ寄り添う側で描かれている)

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