サッカーボーイズ13歳 雨上がりのグラウンド2011-07-19

はらだみずき   角川文庫   552円(税別)

サッカー小説といえるものは、そう多くない。
サッカーしている場面が描かれていたとしても、
選手の息遣いが聞こえてはいない。
ターン制で行われるアメフトや野球と違い
攻守が目まぐるしく動くため、
競技中の選手の思考を表現しにくいのかもしれない。
漫画にはサッカーを題材にしたものが多数あり、
競技の臨場感、駆け引きまでを、人間関係まで描きながら魅力的なものに仕上げている。
小説では、わずかに『龍時』くらいしか良いと思うものに出会えていない。
サッカーは小説という表現形式より漫画向きなのかもしれない。

そんなサッカーを題材にし、成功している小説が児童文学の中に隠れていた。
競技の持つダイナミズムを十分に感じさせる、非常によくできた物語になっている。
恐るべきは児童文学というべきだ。
そういえば「バッテリー」も児童文学だった。

とにかく大人の本読みで未読の人がいたら読むことをお勧めしたい。

なお、本作はサッカーボーイズ ―再会のグラウンド
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2009/08/08/4487988
に続く第2弾である。

妖怪アパートの幽雅な日常 52011-07-19

香月日輪   講談社   495円(税別)

「妖怪アパートの幽雅な日常」の1~4巻については
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2010/10/31/5459800
で触れている。

面白いとは思うのだけれど、戸惑う気持ちもある。
魔導師の修業をしている。三界を行き来する得体のしれない人間がいる。
そういう設定自体はいいのだろうが、
作中の登場人物の驚きだとか、行動が、も一つすっきりしないのだ。

自作が文庫になれば、たぶん買って読むのだろうが、
次も、どこかもやもやして読んでしまいそう。

年取ってしまったから感性が鈍ってしまったのかな。

その後の犬飼さん家の犬2011-07-19

倉木佐斗志/永森裕二   竹書房   648円

「犬飼さんちの犬」
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2011/01/20/5642389
の後日譚となる。

それなりには面白いが、小説としてはいまいち。
先にドラマがあり、その動きを反映させるあまりに、
傑作たりえないということなのだろうか。
人だけの個所だけなら、映像は見えるし、感情もわかるのだけれど、
いざ犬が出てくると、動きが不自然に思えて仕方ない。

擬人化は確かにしていないが、犬が犬としているとは見えない。
都合よく結果を導くための小道具になりきっている。

それなりに読ませるけど、あえて読む必要もなし。

サモエドという、非常に愛くるしい犬を物語の中に取り込んだことで、
変にサモエド人気が出ないことを願ってやまない。
性格的には申し分なしのようだが、
極寒地の犬ゆえ、日本で飼うには夏対策に注意がいるだろう。
見た目だけで飼って、グルーミングもせず汚いとかいう人間が飼った日には…
考えてはいけない。