妖怪アパートの幽雅な日常 1~42010-10-31

香月日輪    講談社400‐448円

香月日輪(こうづき ひのわ)は和歌山県田辺市生まれで、現在は大阪に住んでいる。
地獄堂霊界通信シリーズで1994年にデビューしたようだ。
すでに16年のキャリアを経ているというが、ぼくははじめて読む。
主として児童文学で活躍しているからで会えなかったのも不思議ではない。
 
妖怪アパートの幽雅な日常は2003年から刊行され、
2004年に産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞、
その後2009年までシリーズとして次々刊行されている。

本シリーズは、良心をいっぺんに亡くし、おじの家に世話になっていた稲葉夕士が主人公。
おじ一家からは大切にされていたというものの、やはり異物感が拭えず、
早く独立したくて寮のある商業高校に入学するところから始められる。
念願の寮生活が始まろうとする、まさにそのとき寮が全焼。
途方にくれているところで見つけた不動産屋で紹介された下宿屋に飛びつく。
だけど、そこは妖怪たちが暮らす妖怪アパートだった。
天地がひっくり返るほどの衝撃が勇士を待っていた。

縛られていた常識が崩れる一方で、さまざまな妖怪や風変わりな人たちとの邂逅を経て、
融資は自分の世界観が崩れ、縛られていたものから自由を得ていく。
夕士の急速に変わっていく世界観が、読んでいて楽しい。

ただ、登場する妖怪たちなり、一風変わった人たちのありように、
奥深さが感じられないところが残念だ。
とは言っても、対象となっている読み手を想定したとき、
あまりに複雑な造形はこんなんなのだろうとも思う。
よくできたお話であるし、続刊の文庫化が進めば買うとは思うが、
手放しで絶賛するのは難しい。

この連作では、
魔導師として成長していく話で終わるのなら
第一巻だけで終わってしまったほうが余韻ありのようにも思う。

4巻まで読み終えた現状では、そう思ってしまうのである。