朝倉秋成を3作ばかり2022-03-12

この人が注目を浴びる話題の作家と知り、
平積みされていた「教室が一人になるまで」を読み、
面白いのだけれど手放しでほめそやすには腑に落ちない思いもあり、
「フラッガーの方程式」それから「九度目の十八歳を迎えた君と」と
立て続けに読んでみた。

ただ楽しいだけの「フラッガーの方程式」なら
この人の作風はいいと思うのだが、
重い主題の他の2作では。こういう手法じゃないほうがいいと思った。

SFでもなくミステリでもない。青春小説といってよい。
それも苦悩する青春の痛みを描いた「教室が一人になるまで」には
限定的特殊能力を設定せずとも書けるだろうと思ってしまう。
「九度目の十八歳を迎えた君と」は、どうにか納得できたというところ。

「九度目の十八歳を迎えた君と」は、高校で片思いしていた同級生が
当時と変わらぬ姿でいたのを見て、なぜ年齢を止めてしまったのかという
その原因を探すうち、彼女と同じ状況下にある自分を発見する物語になっている。
高校時代の片思いの日々の回想部分は、かなりな人たちが経験してきたことだろう。
そういう点では秀逸なのかもしれない。
が、物語として受け入れるのはつらかった。
面白くないというつもりはない。率直に書けば一気読みできる。
登場させている人物たちもなかなかによい。
だけれど、わざわざ年齢が進むのを拒否する能力なくともかけたんじゃないかな。

「教室が一人になるまで」は、学校の教室の中の力学を題材にする。
次々に自殺する4人の級友たち。ところが自殺ではなく殺人だという。
嘘を見破る能力を突然引き継ぐことになった主人公が
人の好き嫌いが分かる能力者とともに犯人探しを始める。
その特殊能力は高校の敷地内のみで効果を発揮し、
それぞれに異なる発動条件があるらしい。
果たして犯人にたどり着き、復習ができるかというストーリーになる。
物語自体はよくできているし、決着のつけ方もどうにか納得できたが、
あまりにも無理やりが感じられ感心はしたが受け入れきれなかった。
みんなで一丸となって行事に取り組む最高のクラスにしようと頑張る生徒がいる。
そういうことがなじめない生徒だっている。なんで一人ではいけないのか。
僕も子供のころの立ち位置は近いものがあった。
だから物語りとしては染みるだけに特殊能力などない形が望ましいと思った。

「フラッガーの方程式」は、誰もをヒーローにするフラッガー・システムなる装置が
数々のドタバタを巻き起こしていくというSFタッチで読むと楽しい。
こういうタイプの小説なら、特殊設定も突っ込むことはせず、
だまって受け入れ楽しく読めばいいのだ。
テスター参加した彼の片思いを成就させたいという願いの暴走ぶりが笑いを生み出す。つシステムが停止したのちも影響がのころのは当然っちゃ当然なので
テスターにとってのハッピーエンドもよきかな。

この人の作品はもう少し読んでみようかと思う。