追加検査2021-09-14

5月の混合ワクチン接種時に、診断時心雑音が見られた。
何らかの都合で一時的に出ているだけかもしれないが
犬種特性として心疾患が隠れていることもあり得るから
3か月後くらいをめどに受診するよう申し渡されていた。

で、先だって受診してきたのだ。

今回は顕著な雑音がないとのことで心配ないでしょうとのこと。

フィラリヤ予防薬・ネクストガードは6か月ごとにもらいに行っているから
その度の診断で様子を見ていこう。

めっちゃ元気な奴であれ、変化は早めに関知するのがいいだろう。

一寸先はわからない。2021-09-18

どん鶴峰という景勝地がある。
子供の遠足に行くような、街から近い奇勝地である。
凝灰岩の地質が侵食されて出来上がった
ハイクコースは普通に歩いても2時間もあれば回れる程度の広さだ。
峰とは名付けられるも、標高にして150メートルばかりの
どのように歩こうとすぐに人里に出られるような土地なのである。

とは言っても場所によれば
最大斜度60度以上で3-40メートルにもなる断崖がある。
足場は風化が進み非常に滑りやすくなっているから危険はある。
滑落したならただでは済まない。

そこにさえ注意していれば、たとえ道に迷ったところで
なんとかなる程度の地だ。
まあ大型の哺乳類(といっても熊はいないだろう)はいるだろうが
襲われてどうこうという話も聞かない。

そんな地で知人が行方不明になった。
何度も捜索が行われたが、とんと行方が分からない。
行方不明になってから3週間がたった。
2度ばかり捜索に協力したが、足跡すら見つからなかった。
遺留物一つ見つけられないまま。

自ら行方を隠す必要もない。そんな人である。
コースをたどる中突然の記憶障害や疾病でも起こさぬ限り
大きくコースを逸脱した行動をとるような人でもない。
迷ったことでパニックになり滑落したとかない限り、
命を落とすことなど想像できない。
それなのに警察でも事故報告が把握できないのだから
現地、あるいは周辺のどこかにいるとしか考えられない。
延べ数百人が捜索したのに見つけられない。

たいして危険があるわけでなくとも、
単独行が持つ危険を改めて感じる。

もし命を落としているのだとしても、遺体くらいは見つかってほしいものだ。

なにかと犬連れとはいえ単独行の多い僕も
持病もあるのだから気を付けなければなるまい。

シリーズものも読み続けている。2021-09-19

ホーンテッド・キャンパス 待ちにし主は来ませり/櫛木理宇
なんと18作目である。
まだ恋人未満のまま。いやいや、いくらなんでもここまで草食な男はいるまい。
事件のほうはだんだん質の悪いものになっている。
いやいやホラーなんだから王道なんだろうけど、
始まったころ方考えれば少し深刻になり過ぎでは。

しゃばけ てんげんつう/畠中惠
なんだかんだでシリーズ22作目。
相変わらず病弱で寝込んでばかりの若旦那も
だんだん頼りがいがある男になってきている。
病弱の設定は覆りそうにないけれど、
妖たちと仲良く助け助けられ「しゃばけ」はこれでいいのだろう。

幻想商店街/堀川アサコ
幻想シリーズもなんじゃかんじゃで8作目。
一部登場人物が交差するが、それぞれ独立した物語として楽しめるし、
全作品が一つの世界観でくくられた物語として読み続けるもよし。
ホラーに属するところがあるものの、ファンタジー色が強めで読みよい

死物語(上・下)/西尾維新
「混物語」を合わせれば28冊目。大概にせーよ。
いつ読むのをやめようかと思いながらも買い続けてしまう。
体に悪いとわかっていてもやめられないたばこのようなもの。
習慣性(中毒性)が怖いシリーズだ。
著者は趣味で書いてる。うーん。買う側は趣味などと言ってほしくはないのだ。
大学生編終幕とあるから、まだ続くのか。
物語シリーズ未読なら手を出してはいけない。

RE: ゼロから始める異世界生活 27/長月達平
こちらもシリーズを全て数えれば37冊目。現在第7章というが、何章構成になるのやら。
これも金がもったいないから読むのやめようと思うけれど、
話の落ちまで行かないと気持ち悪い気がして買い続けている。
惰性とは恐ろしいものだ。

荒海の槍騎兵/横山信義
6巻で完結した。横山作品は気に入っていたが、
ここまで同じ時代に題材を求めて書き続けていると
だんだんと新鮮味が薄れていくのはやむを得ない。
国力の差など考えれば、どれだけ仮定を重ねても日本敗戦は必然になる。
どういうふうに負けるかが異なるものの、
軍人たちの美化や、偶像化が起きているし、もういいかなと思う。
以後、もう読まない

もし架空戦記物を読むなら身内の引き倒しかな。次は。
志茂田景樹がやっていたようなね。

ざっと主要なものを記録してみた。。

帰蝶2021-09-21

諸田玲子

諸田作品を読むのはずいぶん久しぶりになる。
記録を残しているものは2作品ある。
『月を吐く』(瀬名=家康室今川殿)
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2007/01/01/1085756
『犬吉』
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2006/05/10/359613

久しぶりに手を出したのが「帰蝶」ということになる。
信長室・濃姫は没年など不明な点が多くて、
いろいろな作家が扱いに苦慮しつつ
信長の勢力拡張に際して重要な役どころを与えている。
が、たいていの場合後半になればフェイドアウトしていき
姿を見失わさせられる。
あの大河ドラマでも光秀に謀反を決意させるに重要な役どころを与えたが
途中では姿を見せないでいる。

その帰蝶を活写したといえるのが本書ということになろう。

巷説では比較的早い時期に死去していたとするものや
京で仏門に入り暮らしていたとするもの、
本能寺で信長とともに戦い討ち死にしたなどとするものがあったりしたが、
諸田さんは信雄の残した資料などから本能寺後も生き残り天寿を全うしたとの説をとる。
そのうえで織田政権樹立に深くかかわった禁裏御蔵職・立入宗継に
帰蝶との間の心交流を付与し、それが本能寺の因になったとする。

本書の読みどころは帰蝶の目を通して語られる信長にある。

始めは信長の苛烈さを”面白い”としていたが、
信長の苛烈さが勢力拡張に応じて苛烈になるさまを見て怖れを持ち
それでも信長の底流にある愛のありようにも魅かれている。
それが妙にすっきりと落ち着くところがいい。
立入宗継に感じる行為もまた微妙なものではあるけれど腑に落ちる。

戦国を生きた女性たちの覚悟が 見事に描かれた一冊と覚えた。

秀吉の活2021-09-22

木下昌輝

「宇喜多の捨て嫁」と「天下一の軽口男」で気に入り、
「宇喜多の楽土」
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2021/03/04/9353529
に続いて手を出したのが本作。

大綱出世物語で取り上げられた事跡の描写がない、
帯にある通り「こんな秀吉、読んだことがない」のである。
それから本作品は対策といってよい。600ページもあるのだから。
ただ長さは感じさせない。引き締まったたたずまいである。

タイトルの活は二重の意味がある。
ひとつは就活とか妊活といった意味での「活」
いま一つは「活かす」という意を字義通り追い求めた秀吉の生きざまだ。

秀吉の一生を十の時期に分け
信長という主に巡り合うまでを「天下人に就活」、
以下「婚活」「昇活」「凡活」「勤活」「転活」「天活」「朝活」「妊活」「終活」と続く。
元は新聞連載小説で単行本出版時に「朝活」が加えられ十章構成になったとのこと。

木下氏の太閤記といってよいのだが、
他の作品群との違いがどこかと僕なりの考えを示すなら、
数多の作品は、のちに関白となるほどの人物だから
当初より頭抜けた才能を発揮していた前提で書かれるのに対し、
木下氏は何者でもない無力な男が、周囲との関係で触発され
足搔いて自分なりに成長していったという書き方をする。

実父・弥右衛門から「生」きることと「活」きることの違いを教えられ、
同時に無名のものの虐げられる悔しさを覚え出世を考える姿を描く。
以後「活」きることを求めるが、いざとなれば他に勝る能力のない自分を見つけ、
折れそうになるたび、誰かに助けられ、少しづつ出世していく。
最大の助言は信長の一言であり、その「凡人を極めろ」が、
ついには信長の後継者へと続いた。

「終活」における秀吉の秀頼への手ほどきこそが、
この作品の肝である「活」の重みを表している。

いや、面白かった。

ルビンの壺が割れた2021-09-23

宿野かほる

2017年に出された書下ろし作品で、
著者は経歴等明らかにされない覆面作家とのことだ。
一般に全くの無名の作家作品が書籍化されることなどまれなので
経緯を確かめてみると、作者自身の手でネット公開
著者の知人が紹介し、出版を打診、期間限定で無料公開しコピーなどを募集、
1万部で出版、重版し、2020年に文庫化したということになるようだ。

タイトルにある「ルビンの壺」は
向かい合う人物と思ったら、間の空間が壺に見える。
またはその逆で気づくかという絵だ。
この作品は二人のメールのやり取りに終始するが
二人の間にある空間が過去の事象となっており、
見えるものが刻々変化するように読者を惑わす。
そして結末までたどり着いたところで「壺」が割れてしまうのだ。
タイトルが秀逸だというほかない。

作品自体は書簡小説の流れにある。やり取りは現代風にSNS上である。
大学の演劇サークルでの先輩と後輩にあたる男女のやり取りとなる。
最初のメッセージは大学時代から30年近い空白をはさみ行われる。
男のほうがフェイスブックで見知った名に出会い
懐かしさのあまり連絡を取ろうとしたように思わせる。
女はかつての恋人であり、結婚式前日の失踪したという。
月日を超えた愛の再炎を予見させるところから始まる。
2年かで3通のメッセージを送った後、
当の女性から返信があったことで大きく物語が動いていく。
二人の間でのメッセージの交換は、30年前の出来事をたどりつつ深まる。

が、次第に不穏な面を見せ始める。
会う気がない、知る気がないというのに執拗に住所を尋ねる。現声明を尋ねる。
過去の出来事で女がいたから起きた別れと愚痴を言う。
序盤で提示されている「警察は苦手」というのも
パソコンの存在に驚いたところも(1980年代のパソコン普及率は10%ほど)
どうやら彼の30年が社会から隔絶した場所にいたことを示している。
進むに連れ不穏な空気は強まっていき、
最後の女からのメッセージで全貌が分かるのである。
どちらにも見える絵の中の壺が割れる。残るものは何もないのだ。

帯にある「日本一の大どんでん返し」はオーバーに過ぎるが、
十分に楽しめる作品であった。

にゃん! 鈴江三万石江戸屋敷異聞帳2021-09-24

あさのあつこ

緩い小説は嫌いではない。ちゅうか、好きだ。
が、ちょいと不満が残ったのが本作品ということになる。

著者は児童文学やYA本を主戦場にする向きがあり、
あまり暗い描写はしない人なのである。
出世作「バッテリー」は例外にして
だいたいはユーモアを利かせた明るい物語が本領と思う。

帯には、古いTVドラマ「奥さまは魔女」の惹句をもじり、
「奥方様は猫だったのです」とある。
犬猫小説に目がない僕が手に取るのは必然なのだ。

時は江戸。鈴江は3万石の小藩とはいえ立派に大名家。
そこに奉公に上がったお糸は商家の娘。
幼少より人に見えない妖を見る目を持つ。
屋敷につくなり感じる気配は妖がいる。
奥方にあった時不思議や猫を見る。
奥方から明かされる驚愕の事実。
1000年生きてきた猫族だけどちょっと不思議な一族なんだという。
親に至っては6000年生きていて、世界を旅しているのだ。

奥方は一目ぼれした殿様と添いたいと希い、
父の力でなんと願いがかなったという。
小藩だけれど、やっぱり跡目争いなんかもあり、
なかなかに陰謀が渦巻いているようで、
殿様の周りには呪怨の動きがあるという。
お糸は億型の純真な思いと、見た目の可愛さにほれ込み
陰謀に立ち向かうことになる。

後半に至り、6000年生きてきた親猫・権太郎、
権太郎とひと悶着あったという狐の艶耶子、
その他が入り乱れて大騒動のドタバタが起きる。

決着は大団円で幕を閉じる。

…。…。
いや楽しい読み物ではあるのだ。楽しくてすっきりできるのだ。
良い読み物でしたといえばいいのだ。
けれど何かと不満が残るのだ。
「彩雲国物語/雪乃紗衣」でも感じたようなところに引っかかる。
言葉が軽すぎる。時代背景がほとんど考慮されない。
寿命の違いがもたらす悲劇を予感させない。もろもろ。

中高生の、あるいは小学生が読んだら楽しいだろうとは思う。
だけど時代小説が(歴史小説)が好きな60男が読むには軽すぎる。
同じ設定で、同じ味のママで、もっと本格的にもしえただろうにと思うと
なんだか惜しいと思うのだ。

電話アンケート2021-09-24

月に何度か、何やかやと電話でアンケートが来る。
リアルな人の応対のものはたいていがアンケートと称する販売だし
セールス・トークの入り口にアンケート風を装うだけのものだ。
まだしもセールスと言ってきているなら話くらい聞いてもいいが
目的を隠してアンケート風を装う輩は無視するに限る。
そう思っていても、とりあえず話を中断させ社名を確認し、目的を尋ねる。
何かを売るためなのかと聞くと、そうだという。
どのようなサービスを売り込みたいのか聞き、
結果興味がないと話を打ち切る。
通話を終える前に相手が「時間を取っていただきありがとう」って
感謝してくれてもいいように思うが、
断った瞬間ガチャ切りしやがる。
そういう事例が多すぎる。

電話を取った瞬間録音が流れてくることがある。
運が悪ければ留守録にそれが数件という日もある。
まっとうな調査目的のものがあるのだろうが、
社名(調査実施主体)は、冒頭で早口に録音されていて、認識しづらい。
そのうえ簡単なアンケートと言いながら
こちらの機器形状などお構いなしにぶしつけなお願いをする。
ごくまれに付き合ってみることがあるが
簡単なアンケートと称しながら結構な時間テープが続く。

たいていむかっ腹を立てることとなる。

マスコミであれ、行政であれ、アンケートを行うならテープでするな。
どれだけ失礼なことをしているか知るべし。
こんな協力要請があっていいはずがない。

五郎丸の生涯2021-09-26

三浦明博

犬猫の物語は、見かければつい買ってしまう。

どれを読んでも、それなりにウルウルしてしまうけれど、
読者が好む作品はパターンが出来上がっている。
だからどれを読んだところで真新しさなどない。
いくつかの典型は、犬に語らせるロード・ノベル風のもの、
擬人化はしないけれど人が感じる癒しを描くもの、
あるいは現実を反映した闘病記、放浪犬の運命、
そういったところじゃないか。
翻訳小説であれ、日本人のものであれ、同じようなものだ。
そういった視点から見たなら大半のものは駄作といってよい。

この小説も多くの先例が思い出せる。その意味では読む意味などない。
大駄作と思える。でも駄作だからと言って読ませないわけではない。
たいていの先例で語られた類似エピソードだったとしたって、
胸キュンしてしまうに違いない。人が犬の物語に望む要素が網羅されている。

納屋で死のうとした男性が見つけた犬の遺体。
死のうとしていたが哀れを感じ、とりあえず弔いを上げることにする。
なんで納屋で息を引き取る羽目になったか。
立ち上る煙を見て様々に思いを巡らせる。
そして一頭の秋田犬の物語が語られるです。

その秋田犬は子供にけがをさせたということで獣医で保護され、
孤独な男から、不運な女、平凡な家族、野犬に敵意を感じる農家、
そういう人たちを渡り歩きながら、温和な顔と思慮深い顔で
関わる者たちに立ち向かう勇気だとか心に救いを与えていく。
あるいは人間の身勝手さに気づく

そういう物語だ。
あまり犬の物語を読んだことがなければ感動できるかもしれない。
犬と暮らしたことがある人なら、そういう犬の飼い主になりたいとも思わせる。
だが、ただそれだけのことである。
そんな奇跡がないことは知っているし、
人に読んでもらうために脚色されたファンタジーだと見抜けるだろう。

だから駄作なのである。でも読む価値がないとは思わない。
読めば必ず感銘を得る。
たかが犬が与える豊かさの一端は物語から感じ取ることができる。

あまりこうした体裁の物語を読んだことがなければ読むのもアリだ。
話題になった「少年と犬/馳星周」
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2020/09/15/9296359
を読んでいるなら、もういいんじゃないかと思う。(こちらが先行作)

スイート・マイ・ホーム2021-09-27

神津凛子

沼田まほかるに真莉幸子、湊かなえあたりが登場したころ
一群の作品をいやミスというようになった。
この神津作品は、それを超える「おぞミス」と名付けられている。
たしかにこのミステリの犯人役は悍ましい。
その身体能力も、ほぼ化け物といってよい。
よくこんな人物像を生み出したものだと感心する。
感心できないのは、もはや人ではない点。
ホラーにしたほうがはまりましょうに。

可愛い長女に、生まれたばかりの次女、ハンサムな旦那と美人の嫁、
人もうらやむ幸せいっぱいの家族がマイ・ホームを立てる。
担当は美しい長い髪の女性で夫婦ともどもとも良好な関係。
地下に据えた空調設備だけで家全体が冬は暖かく、夏は涼しい、
それでいてランニングコストは個々の部屋に空調を入れるよりいい。
理想的な家族と家。この取り合わせが奈落の底に転がっていく。

家の屋根裏などに人がいるという物語はいろいろあるが、
こんな気持ちの悪い人を住まわせるのは空前絶後に思う。
原さんの「床下仙人」も不気味ではあったが、クスッとさせる味があった。
この作品は余裕なし。気持ち悪いだけなのだ。
(そうはいっても読み物として嫌いではないが)

進むにつれて登場人物たちの裏の顔が暴かれていく。
ハンサムな旦那が閉所恐怖症なのだが、それさえ悍ましい過去がある。
美人の嫁は壊れていく中で悍ましい犯罪を犯すし、
美人担当は、ほぼ、怪物だ。
開始時に異常かと思えた男が、後半に反転してまともに思えるのが唯一の救い。

物語の世界も、いよいよ行き着く場所がなくなってきたようだ。
ダークな作品は嫌いではないが、ここまでくると考えこむ。
物語には明るさがあったほうがいい。