もうすぐ3ヶ月(その2)2006-05-14

うちに来たころの「そらん」と「ごお」
性格がよいジョンだから、飼い主としてバトンを受けた後も、
随分と楽だったのだと思う。
捨てられた犬ではないし、放棄された犬でもない。
やむを得ない理由で、飼育が困難な状況になったから、
すがる思いで新しい飼い主を探された犬である。
人に対する信頼感を失っていないジョンだから
こんなにも早く溶け込めたのだ。

これがいったん捨てられ、処分施設に連れて行かれた犬だったら、
こんなにうまく気楽に我家で、生きていくことができたのだろうか?
捨てられた犬と新しい人の縁結びをしている人たちの経験談や
放棄犬の飼い主をしていられる人の本音を聞かねば分からないけれど、
世間で噂されているほどには、難しいことではないのかもしれない。

子犬を育てるのが、自分の理想の犬を作る喜び、子どもの養育とするなら、
成犬を引き取るのは、恋人作りに似ている。
その犬のいいところを見つめ、自分にとって不都合なところを、
犬と対峙するなかで折り合いをひとつずつつけていく。
うちのように先住犬がいる場合は、犬同士の関係も、
犬に任せながら、程よく干渉し、全体ルールを築かねばならない。
結局、関係性を築く能力が問われているということなのだろう。

僕は他人との関係性を築くのが苦手なほうだけれど、
その僕でも、ジョンに関してのみ言えば、飼い主として成功している。
成犬と、いきなりまったりとした生活を送るってのも悪くない。
子犬に振り回され育児ノイローゼみたいになるくらいなら、
保護を必要としている犬と暮らし始めるほうが、
よほど幸せな時間が多いと思う。

我輩はカモである。2006-05-14

ドナルド・E・ウェストレイク 早川書房 780円

エドガー賞受賞作品だそうです。

街を歩けば騙される。寸借詐欺に怪しい物品販売に、
とにかく何でござれ、たやすく騙されてしまう、
友人の刑事ジャックにもあきれられている、
女性にもてない、うだつの上がらないフレッド・フィッチが主人公。

そんなフレッドがある日50万ドルの遺産の相続人に指名される。
見も知らない叔父マットがフレッドに残したのだ。
マットの遺産はどうやら黒い金のようなのだ。
ばくち打ちに詐欺師、それがマットの素顔だった。
あろうことかマットは殺されたのだ。
それからというもの、フレッドをカモにするべくいろんな人が入り乱れ騒動。
美人に言い寄られるは、暗殺者に狙撃されるは、大変。
カモられ男フレッドの運命や如何に?

この作品は1967年に出版されている古典だ。
だから感覚的に50万ドルの重みが分かりづらい。
当時の為替レートなら250-300円くらいなので
大体1億数千万円に相当する。
それに初任給から考えれば、当時大卒で1-2万円が精一杯。
つまり日本でなら10億円近い価値があったということだ。
アメリカという点を考慮しても数億円規模ということなので、
犯罪に巻き込まれるには充分な額だ。

物語の背景が大きくなり、国際的な犯罪組織の存在などが、
マット殺しに関係すると思わせるのだが。。。
事の真相を読者が知ったとき、
もっとも騙されていたものが誰かが分かる。
それが自分だったと分かったときの驚きが目に浮かぶ。

9点