サイレン2006-05-18

万乗大智 小学館 505円

ゲームから発信する恐怖世界。
映画、そしてコミックと。
サイレンの不気味な音色がなるとき、恐怖に震撼する。

と、書いてみたものの、僕は映画もゲームも体験していない。
だからこのコミックから感じられるものを記す。

コミック版「サイレン」を創造したのは、
少年サンデーで「Dandoo}を書いていた人である。
どちらかといえばきれいな線で描く漫画家だと思う。
人間の意地悪さなどの表現はうまいが、
この世のものならぬ者の表現には、
線がきれいすぎて、おどろおどろしさにかけるのが残念。

コミックスのあとがきで、映画、ゲーム、コミックが
それぞれリンクしあうものの、まったく別であると説明されています。
したがって、どの媒体のものから入っても
ネタがはべれてしまうということはないとのこと。
しかしコミックでは、この世界観を表現するのに音響が使えないため、
もっとも不利な表現形態といえるのかもしれません。
それでも恐怖の片鱗を感じさせるのですから、
作者の技巧はたいしたものなのでしょう。
全盛期の梅図かずおとか、古賀新一あたりが書くとどうなるのか見てみたい気がします。

物語は16年前一人の幼女を残して
村人全員が失踪した夜魅島が舞台である。
成長し、少女となった天本由貴が、民俗学者とともに、
島の謎を探すため、再び訪れるところから始まる。
由貴はこの島に来る以前から不思議な夢を見ている。
化け物に追われるうち、謎の声が聞こえてくるのである。
その声の主の謎を辿りたいがため島を訪れるのである。
島に到着した由貴は、景観に既視感を覚える。
いや、島自身が由貴の帰還により蠢動を始めるのだ。
失踪したはずの島民が化け物となって由貴たちを襲うなど
次々と起きる奇怪な現象。
「サイレンの夜には光を絶やしてはならない」
由貴が夢で見る謎の少年が、物語の謎を解明する。
どうして由貴が事件の鍵を握るのか。

物語自身の背景はよく分かったが、
なんだか消化不良である。
異次元の存在が、島の信仰に直結していくというのだが、
その始まりの経緯がやや唐突な印象が残る。

とは言うもののホラーとしての完成度は高い。

5点