人は見た目が9割2006-06-01

竹内一郎  慎重新書  680円

最近の新書はベストセラーがよく生まれる。
タイトルの勝利であり、帯コピーの勝利といえよう。
内容的には岩波新書だって、今売れている新書群とくらべて、
特に難解というのではないのに、各社のものはヒットし、
岩波のものは今ひとつな感じだ。
これは本を売る姿勢の差なのだろう。
どちらがよいとは決められないが、
売れるためには手に取られるようしなければならないのは自明のことだ。

本書も、もし『非言語コミュニケーション入門』として発売していたなら、
これほど多くの人に読まれることは無かったろう。

著者は比較社会文化という学を修め、教鞭をとった後、
漫画原作を手がけ、戯曲を物したりし、
演出や演技指導している人だ。

帯には『理屈はルックスに勝てない』とあり、
僕など見栄えが悪いので、はらはらとしつつ読み出したのだが、
コピーほどには刺激的な内容とはいえない。
むしろ古典的な内容といってもよいくらいで、
米大統領などは、本書で述べられていることを実践している。
言語による伝達より、非言語の伝達が好感を得るキーとなる。
そうしたことはかなり知られている。

ただ、日本人の様式美は欧米とは異なる伝統を持っていて、
そうした理論がそのままだと理解しにくい面があった。
それを本書では解きほぐしているところは目新しい。
だからといって日常における
非言語伝達力向上の処方箋が示されているわけではない。
あくまで参考になる程度だと思う。

全体としては、演技論、漫画技法論としてみたほうがよりよいように思う。
特に一定年齢層以上で、
漫画をくだらないものとして捉えている人たちには、
本書から、高度な技法を併せ持つ、
総合芸術としての『漫画』を感じていただきたいものだ。

6点

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