ソロモンの犬2011-08-04

道尾秀介   文春文庫    581円(別)

『月と蟹』で第144回直木賞を受賞した、今が旬の作家。
1975年生まれだから、これからの伸び代がある。
さらなる秀作が期待できるだろう。
僕の道尾作品体験は、大ヒットした「向日葵の咲かない夏」に続いて2冊目。
作品としての凄味は「向日葵の咲かない夏」のほうがインパクトがある。
インパクトではやや劣るが、「ソロモンの犬」も負けていない。

それにしても道尾氏の略歴を見るとすごいと思う。
2004年に『背の眼』で作家デビューを果たし、
同作品は第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞している。
その後、専業作家に転身。
2011年までに17冊の自分名義の単行本をものしている。
そのうち11作品が文学賞を受賞するか候補となっている。
完成度の高さを物語るものだろう。
「このミス」でも上位にランク入りし続けているなど、
レベルの高い推理小説の書き手として読者からの支持を得ている。

「ソロモンの犬」は2007年に発表された初期作品。

4人の大学生、静、京也、ひろ子、智佳は、
それぞれに青春の中にいる。
その4人には、教授のひとり息子の陽介という友人がいる。
陽介は、年の割には大人びた口をきく、
オービーという名の犬といつも一緒にいた。

夏季休暇のさなか、陽介がオービーに引きずられ、交通事故で死ぬ。
なぜよく訓練されている犬が突然飛び出したのか。
静は、動物生態学に詳しい間宮助教授に相談に行く。
いなくなったオービーを探しながら、
現場での友人の不可解な言動などに疑問を感じはじめる。
陽介の母でもある教授と、京也との関係の深さにも驚く。

どうして事故は起きたのか。
ソロモン王のように、オービーに話が聞けたなら。
もしかしたら事故は偶然ではなかったのか。
4人の関係は狂い始める。

登場人物の関係から意外な原因が判明したときには唖然としよう。

ほろ苦い青春を描いた好作。

仕掛けに犬の習性を取り入れ、
間宮という怪人を挟んだことで、
陳腐になりかねない話を、
青春ミステリとして楽しめるものにしている。

ラスト近くでの間宮の描写がとても良い。