裏切られ信長2022-03-10

金子拓

歴史小説ではなく、歴史研究者が一般向けに書いたもので、
信長と同盟関係にあった浅井長政、武田信玄、上杉謙信、毛利輝元ら戦国大名と
松永久秀、荒木村重、明智光秀ら家臣が
どのようにして信長を裏切るに及んだかを考察している。

家康との清州同盟以外は、戦国大名との同盟関係は物語に現れないことが多いが、
資料からいつまで友好関係が保たれていたかを見ていき、
信長外交の特性が、どうやら信長の性格・思考法に難があるようだと指摘する。
家臣の裏切りについても同様で、
信長という覇者は恐ろしく不器用だったと思わせる。

決断力に富み苛烈な男というイメージが崩れ去り、
心の機微が分からない情けなさに見えてくる。
同盟者であったらかわいいが、ひとたび対立されるや憎しみを持つ。

ここに見る信長を反映させた小説を書こうものなら、
哀れな信長物語になってしまうだろう。