彩雲国物語 白紅は天をめざす2008-02-21

雪乃紗衣   門川ビーンズ文庫   514円

シリーズ第12作。(サイドストーリーに当たるものを含めれば15作目)

発売されたシリーズは一応読んできたが、
これまで所管2間の感想を記したのみで済ませている。
「彩雲国物語 はじまりの風は紅く」  http://kumaneko.asablo.jp/blog/2006/11/17/958041
「彩雲国物語 黄金の約束」
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2007/01/15/1112479
いい大人が面白いというほどのものではないし、
ストーリーもご都合主義の簡便なものとの印象があったのである。
さりとて酷評するようなものでもない。
中学生や高校生が読むには、
ちょっとした息抜きとして毒にはならない読み物といえるし、
物語り全体としてなら、十分な及第点となろう。

シリーズを重ねるごとに作家の文章は完成してきている。
しかし、残念なことに力量が増そうと初期設定の無理が祟り、
力量を縦横に発揮するというわけには行かないようだ。
ライトノベルであるにしても、人間の微妙な揺れを描けぬわけはない。
その意味では小説としての奥行きはない。
漫画的な展開であり、文字にして発表する意味があるのかと疑ってしまう。
むしろ未見ではあるが、
アニメ化されているという放送を見たほうがしっくり来そうである。

初期設定の無謀さは、それこそ随所に見られるが、
主人公について言えば、普通の少女という設定であるのに、
絶世の美女と瓜二つという表現がされていたりする点だ。
時間経過、伊藤に費やす距離感などにも矛盾がある。
一言で言えば、奇想天外、奇妙奇天烈というべきだろう。

この巻では、王が去っていった側近を再び迎え入れるために、
十三姫と秀麗の父・卲可を供に藍州をめざす。
一方、秀麗は監察御史としての狙いもあり、藍州行きを希望していた。
王を連れ戻すという目的で藍州派遣を得た秀麗は、
以前に任務を供にした燕青と、部下・蘇芳と供に藍州に向かう。
王は側近の信頼を再び得られるのか。
王不在の都ではひそかに陰謀も蠢きだしている。
また、秀麗は無事任務を果たし、王のための臣として成長していくのか。
それぞれの思いが錯綜しながら物語りは動いていく。

ハリケーン・トリマー2008-02-21

柳川喜弘  日本文芸社   552円

「漫画ゴラクネクススター」に連載されていた作品だそうだ。
著者の柳川喜弘の作品を読むのは、本作品が始めて。
漫画家歴は13年にも及ぶそうだが、
大ヒット作というものに恵まれていなかったようで、
コミックバンチに連載した「眠狂四郎」や
「咲いて孫一」という作品が代表作ということになるらしい。
時代劇コミック作家としては、それなりの人気があるようだ。

「ハリケーン・トリマー」は、現代が舞台。
主人公に時代錯誤の派手なリーゼント姿のジョニーを据えている。
ジョニーはトリマー志望の、犬に対しては熱い暑い男である。
彼はペット美容室&探偵所の大黒に勤務している。
トリマー志望なのだが、なぜかトリミングはさせてもらえず、
迷い犬探偵をメインに活動している。

町で困っている犬を見ればだまっていられず、
依頼がなくともトラブル解決に精を出していく。
その行動には、愛犬「プリシラ」への思いが隠されている。

ここに収められた10の物語は、犬に関わる現代の問題が含まれている。
人を噛んでしまった犬、ペットロス、放棄、虐待などなど。
捨て犬を保護することの意味まで書き込んである。
ジョニーの熱い心が問題を解いていくところは清々しい。

世の中には、頭の中がお花畑になっている哀犬救出家や、
犬を救うと称してお金のことばかり考えている、
人の心の痛みに鈍感な者がいる。
そういう輩に、ジョニーの熱い心がわかろうか。

結構気に入りました。