にゃん! 鈴江三万石江戸屋敷異聞帳2021-09-24

あさのあつこ

緩い小説は嫌いではない。ちゅうか、好きだ。
が、ちょいと不満が残ったのが本作品ということになる。

著者は児童文学やYA本を主戦場にする向きがあり、
あまり暗い描写はしない人なのである。
出世作「バッテリー」は例外にして
だいたいはユーモアを利かせた明るい物語が本領と思う。

帯には、古いTVドラマ「奥さまは魔女」の惹句をもじり、
「奥方様は猫だったのです」とある。
犬猫小説に目がない僕が手に取るのは必然なのだ。

時は江戸。鈴江は3万石の小藩とはいえ立派に大名家。
そこに奉公に上がったお糸は商家の娘。
幼少より人に見えない妖を見る目を持つ。
屋敷につくなり感じる気配は妖がいる。
奥方にあった時不思議や猫を見る。
奥方から明かされる驚愕の事実。
1000年生きてきた猫族だけどちょっと不思議な一族なんだという。
親に至っては6000年生きていて、世界を旅しているのだ。

奥方は一目ぼれした殿様と添いたいと希い、
父の力でなんと願いがかなったという。
小藩だけれど、やっぱり跡目争いなんかもあり、
なかなかに陰謀が渦巻いているようで、
殿様の周りには呪怨の動きがあるという。
お糸は億型の純真な思いと、見た目の可愛さにほれ込み
陰謀に立ち向かうことになる。

後半に至り、6000年生きてきた親猫・権太郎、
権太郎とひと悶着あったという狐の艶耶子、
その他が入り乱れて大騒動のドタバタが起きる。

決着は大団円で幕を閉じる。

…。…。
いや楽しい読み物ではあるのだ。楽しくてすっきりできるのだ。
良い読み物でしたといえばいいのだ。
けれど何かと不満が残るのだ。
「彩雲国物語/雪乃紗衣」でも感じたようなところに引っかかる。
言葉が軽すぎる。時代背景がほとんど考慮されない。
寿命の違いがもたらす悲劇を予感させない。もろもろ。

中高生の、あるいは小学生が読んだら楽しいだろうとは思う。
だけど時代小説が(歴史小説)が好きな60男が読むには軽すぎる。
同じ設定で、同じ味のママで、もっと本格的にもしえただろうにと思うと
なんだか惜しいと思うのだ。

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