泣き虫弱虫諸葛孔明 ― 2005-10-17
三国志といえば、三国志演義をベースにして書かれた吉川さんのものや、横山さんのコミックで知っている人が多いのではないか。
両者とも礼儀正しい仁の人劉備とそのもとに集った豪勇たちの、漢帝国再興最にかける熱情を中心に描かれる。非常に端正で礼儀に厚い蜀漢はそれなりに魅力的で心踊らされるものがある。なかでも全治万能の人のように描かれる諸葛孔明は清々しく物語り全般に風格を与えている。
こうした吉川版や横山版に比べ、陳さんの三国志は「秘本三国志」に始まり、「曹操」「諸葛孔明」「曹操残夢」で、より野心的な劉備や、決して万能ではない孔明を描き、時代をより正確に表現しているように思えたものだ。
ほんとうに同じ題材で、作家一人一人が描く三国志の世界は、多種多様であり、どの作品を読んでも私たちに熱いものを伝えてくる。
表題の作品は、酒見賢一版三国志である。酒見版の造形は従来の孔明像を徹底的に覆す。大言壮語の変奇郎。「口げんか無敗。いざとなったら火計の策」とは帯の言葉だが、それ以上。小説のなかに突然作者か゛登場して、三国志演義の矛盾を指摘しながら、演義の劉備一家の虚像を切って捨てる。この酒見版三国志に唯一対抗できるのは「蒼天航路」くらいしか見当たらない。
端正な劉備一家に飽きたファンならぜひ読むべし。
とてつもない怪物「諸葛孔明」の宇宙的な大口に翻弄される除庶や諸葛均の哀れさに笑うしかない。絶対おもしろし。
文藝春秋刊
8点(三国志中毒者には10点)
両者とも礼儀正しい仁の人劉備とそのもとに集った豪勇たちの、漢帝国再興最にかける熱情を中心に描かれる。非常に端正で礼儀に厚い蜀漢はそれなりに魅力的で心踊らされるものがある。なかでも全治万能の人のように描かれる諸葛孔明は清々しく物語り全般に風格を与えている。
こうした吉川版や横山版に比べ、陳さんの三国志は「秘本三国志」に始まり、「曹操」「諸葛孔明」「曹操残夢」で、より野心的な劉備や、決して万能ではない孔明を描き、時代をより正確に表現しているように思えたものだ。
ほんとうに同じ題材で、作家一人一人が描く三国志の世界は、多種多様であり、どの作品を読んでも私たちに熱いものを伝えてくる。
表題の作品は、酒見賢一版三国志である。酒見版の造形は従来の孔明像を徹底的に覆す。大言壮語の変奇郎。「口げんか無敗。いざとなったら火計の策」とは帯の言葉だが、それ以上。小説のなかに突然作者か゛登場して、三国志演義の矛盾を指摘しながら、演義の劉備一家の虚像を切って捨てる。この酒見版三国志に唯一対抗できるのは「蒼天航路」くらいしか見当たらない。
端正な劉備一家に飽きたファンならぜひ読むべし。
とてつもない怪物「諸葛孔明」の宇宙的な大口に翻弄される除庶や諸葛均の哀れさに笑うしかない。絶対おもしろし。
文藝春秋刊
8点(三国志中毒者には10点)
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