天国からはじまる物語2005-11-28

ガブリエル・ゼヴィン著 理論社 1700円

少し前に読み終わっていたけれど、どう表現すべきか悩んでいた。
結局のところ、よい物語だとは思うが僕には退屈だったということなのだ。
表紙にゴールデンが写っていたから買ったのに、
あまりゴールデンが出てこないから失望したと言い換えられる。

主人公はリズ(エリザベス)という15歳の少女。
不注意からタクシーにはねられ死んでしまったという設定。

始まりはルーシーというパグ犬の視点で始まる。
突然死んでしまった飼い主の死に、
たった15歳で人が死んでしまうことに悲しみにくれている序章だ。
最終章で再びルーシーが登場するが、序章との関連で感動できる。

リズは奇妙な船で目覚める。
船室にはタンディという少女がいるだけ。
その客船には老人が多く、若い人はほとんどいない。
タンディ以外にはマシーンというロックバンドのカーティス・ジェスとがいるくらいだ。
みんなが自分が死んだという実感を持ち始めるにいたっても
リズは死の事実を受け入れられずにいる。
そうするうちに船は目的地の『ドコカ』につく。

『ドコカ』では、人は若返っていき、
最後は川に流され生まれていくのだという。

『ドコカ』でリズは様々に迷走しながらも、
出会った人たちとの交流によって、
死んでしまった今も、生きていた過去も、
大切なものだと気づいていくのである。

後は興味があれば読んでみるとよいと思う。
僕自身は、この物語で唯一共感できたものは、
リズをはねた運転手へのリズの視線の変化である。
作中で他者が語る言葉の中で
善と悪が混在しているのが人間だという指摘、
ただひとつの間違いが、その人間のすべてではないと語らせている。
それを受け入れるリズの姿勢が、この小説の価値なのだと思う。

全体としては情緒に富む作品だとは思い、
中学生や高校生が読むのにはいいと思うが、
ひねくれた大人が読んでも共感しにくいのではないかと思う。

死後、その世界を考え
現在に不安を抱いている向きなら一読してもよいのかもしれない。

4点

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://kumaneko.asablo.jp/blog/2005/11/28/158754/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。