秋の猫2005-12-15

藤堂志津子 集英社文庫 500円

帯には『男より、犬や猫』
柴田錬三郎賞受賞作だそうだ。
表題作ほか5つの短編からなる。
一つ一つが独立した作品としても読めるが、
5つの作品で一つのことを描いていると読むこともできそうだ。

物語の中心にすえられるのは30-40才の女性。
結婚というものに野心を抱く。結婚という事実に疲れる。
そんな女性たちだ。

表題作は、結婚にこだわり、付き合う男に妥協をしている女性が、
男の身勝手な浮気と、その言い訳にうんざりした挙句、
結婚への未練もさらりと捨て、別れ、長年の夢だった猫を飼い始める。
飼い始めた猫が、一匹は聞き分けもよく懐いてくれたものの、
もう一匹がどうしても懐いてくれない。
悩むうち別れた男から電話がかかってきて、相談する。
久しぶりに会った男には未練のひとつもなく、
問題の猫に精一杯の愛を注ぐうち、猫とうまくいきだす。
そんな折届いたのは男の結婚のうわさ。
彼女はささやかなお祝いをする。猫の名前で。
したたかだねえ

この作品以外も
一頭の犬の親権で争う破綻した夫婦を描く『幸運の犬』
不遇を呪う女性と資産家の不遇な男が、一匹の猫を通じて結びついていく『ドルフィン・ハウス』
病弱な犬の治療費ため生活困窮に陥る女性と、愛犬を失い嘆く男との出会いと小さな幸せが描かれる『病む犬』
結婚に疲れ生活に疲れる男女が、犬や猫とを通じてゆっくりとした出会いで癒されていく『公園まで』

いずれの作品でも、したたかでしなやかで、弱くも強くもない等身大の人間が息づいています。好著

7点

笑う犬の生活2005-12-15

入江紀子 白泉社 2002刊 457円(本体)

古本屋を見ていて見つけた一冊。シルキーという雑誌で掲載された作品。
シルキーというのは所謂レディー・コミックの分類なのかしらん。

タイトルと扉絵で買ってみたものの、なんということのない恋愛ものだった。
気負わずにスローに生きている女性と、
ドッグカフェ経営者の青年との、緩やかな恋がかかれている。

犬が活躍する物語を期待していたらはずれだけれど、
気取らない緩やかな恋にはまってみたい人にはお勧め。
小道具としての犬にはいい味付けさせてます。

主人公にすえられている女性は、
結婚適齢期といわれる年齢に達していて、両親と同居。
家庭で母親から嫁に行けと言われています。
しかしながらがつがつとしていず、
飄々と「なるようになる」というさばさばしたところがあり、
こんな女性がいたら惚れる男も多かろう、と思ったのだ。

7点