老人と宇宙2009-12-11

ジョン・スコルジー   早川書房   ¥882

ハインラインの『宇宙の戦士』を髣髴とさせる作品との評判で読んでみた。確かに新米兵士が何じゃ患者と活躍するという点では『宇宙の戦士』みたいなところはある。でもねハインラインが書いた時代を考えたら、今頃こんなものかいて何なのよと思ってしまう。大体この本で書かれているような技術があるんなら、何も兼ねかけてへんに新兵訓練積ませなくたってよかろう。と、ネタばれに近い部分で駄作と断定しています。

 宇宙開発競争に乗り出している地球人は、あらゆる生計において異種族との戦いでコロニーを守っている。そのためには戦士が必要なのである。過酷な戦場に出るのは、地球に暮らしている老人たち。人生の終焉を迎えようとしている老人たちのうちから志願したものが、科学の力で老体をよみがえらせて人類のコロニーを守る戦いを行うというものだ。

 設定は面白いと感じたから読み始めてみたが、老人たちが老人の体のままであり続けるのではなく、技術的に作られた新しい体に、脳を移植するのではなく、記憶自体を新しい頭脳に転写させるとしている。一度の生を全うしているものだから、激しい戦いで新しい体を手に入れる喜びと引き換えにすぐに死んでも本望だろうとしている点までは、それなりに面白いとは感じたものの、後半に入ってゴースト舞台が登場するにおよび、この作品には芯がないと思ってしまった。

 ゴースト部隊ができるのなら、主人公のジョン・ベリーは不要である。作品全体を通しても整合性がなく、SFとして期待して読み出しただけに腹が立って仕方がない。金返せ!と叫びたいくらいだが、この本は珍しく借りて読んだから、金返せとすら言えない。ええい。忌々しい本である。

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