ナキメサマ2021-02-27

阿泉来堂

第40回横溝正史ミステリー&ホラー大賞読者賞受賞作ということだ。

元は「くじりなきめ」というタイトルだったものを改題の上、
加筆修正し文庫化したものだ。
帯に「書店員さん驚愕」とあって、何じゃいなと思い買ってみた。
裏には作品紹介に大どんでん返しの最強ホラーなどとされている。

まあいろいろと小細工されていて、
それらの惹句が、かけ離れたものとは思わないが、
さして真新しい手法ともいえず、普通だろと思う。
恐怖感も、さまで高くない。
映像化したらチープなものになりそうな気がする。
そもそも叙述トリック的趣向は映画化には向かないかも。

叙述トリック的と書いたのには
この物語が二つの時間軸に分かれ書かれていて、
その二つの時間が同時進行のように錯覚させる書き方であるからだ。

だけれども比較的序盤で、とても微妙ではあるが齟齬を現していて、
時間にずれがあるとわからせてしまっている。
叙述トリック的に書かねばならなかったのは、
最後のどんでん返しのためであり、まあ,あざとい。

高校の初恋相手を探してと弥生というルームメイトが尋ねてきた。
倉坂尚人は彼女とともに初恋相手が暮らしていた村に向かう。
おりしも23年に一度の秘祭が行われる村に、
弥生と尚人は逗留することとなる。
初恋の人は巫女としてのみそぎのため合わせられないのだという。
そこに雑誌記者と、小説家が加わり、
不穏な空気が少しずつ現れ来る。

「ナキメサマの儀式」それは悍ましい儀式であった。
少しの狂いがとてつもない怪物を生み出すことになる。
狂いを修正するはずの村人たちの浅慮が、さらなる混とんを生み出す。

尚人は初恋の人を救い出せるのかというように読むと裏切られる。

そんな名は存在していないのだという落ちである。

儀式の業者だけは、しっかり恐ろしくは描けているが、
全体の進行は、あららという感じ。

次に読んだ「隣のずこずこ」のほうが、僕にはあっている。

この作家には期待値はある。
変な小細工ナシの直球勝負をしている作品に出合えれば、
また違った感想があったと思う。