反自殺クラブ 池袋ウェストゲートパークⅤ2008-03-10

石田衣良   文春文庫   495円

人気のIWGP5集。
僕の石田さん体験は『池袋ウェストゲートパークⅣ 電子の星 』以来。
『美しい子ども』という長編とIWGPしか読んでいない。
だから石田さんを語るほど詳しくはない。
少ないなりに『美しい子ども』とIWGPシリーズでは、
作品から受ける印象がずいぶんと違うと思っている。
どちらの石田さんも面白いと思ったが、
IWGPの書きぶりはスピード感にあふれたのりのいいものなので、
気楽に読めます。

舞台が新宿でも、渋谷でも、銀座でもなく、池袋というところがいいのかな。
生粋の土着大阪人の僕は、東京で知っているのは新宿に渋谷くらい。
それも一日中同じ町にいたことはありません。
ほかに知っているかもといえるのは、二子玉に駒沢近辺。
東京駅は通過するだけだし、
大昔に吉祥寺に行ったことがあるくらい。
だから東京という都会の表の顔網羅の顔もよくは知らない。
IWGPの舞台となる池袋は訪れたことさえありません。

そんなだからIWGPが語る都会の裏の顔を読んでも、
どこか遠い世界の出来事としか思えず、
架空の物語として楽しめてしまいます。

もちろん石田さんが作品世界で取り上げている事件が、
現実を背景としたものであるということは知っています。
大阪にだって、規模は幾分小型化するとはいっても、
おんなじようにいかれた子供たちが徒党を組んで行動しているし、
いかれた大人たちが、ちょっとした欲望を成就させようと、
夜だけじゃなく真昼間の闇の中で蠢いてもいます。

そうした現実の世界には、『間島慎』君はいないし、
『たかし」も『サル』もいません。
もしかしたらいるのかもしれないけれど、
少なくとも僕の前には現れることはないでしょう。
いるのは『まこと』君が対峙していく相手側の人間ばかり、
食えない連中ばかりです。

『まこと』君のような人物像を創造してしまうと、
物語の作り手は、『登場人物』の啓示によって書けるものでしょう。
残酷で悲惨な現実を反映した事件が、
『まこと』君という存在があるため、暗くすさんだ物語にならないで、
明るく陽気な作品になっている。

続きも読むのだろうな。

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