楊令伝 5 猩紅の章2008-04-27

北方謙三   集英社   1600円

金曜日に買って、土曜日に一気読みしました。

北方謙三の歴史小説にはまっている。
『破軍の星』にしびれて以来、一連の南北朝ものも、
幕末ものも、三国志も読んでいる。

どの作品にも死域を超えるだの、
絶えに耐えるだの、志だの、夢だのと、
昔の少年ならあこがれて当然な感覚がいっぱい。
ベビー・フェースもヒールもなく、
ただひたすら生ききって死んでいく。
男も女も悲しいまでに潔く死んでいく。
滅びの瞬間まで、己の目指すものに向かい、
見苦しいほどに足掻き、夢と共に潰えて行く。

かっこよいのだ。どこまでもかっこよい。

この北方謙三が描く人物に惹かれてしまう。

水滸伝から楊令伝。
費えたはずの夢を求めて、志を追い求めて、
呉用が、武松が、公孫勝、燕青など梁山泊の生き残りは戦う。

前巻で、遼が李富による耶律淳の暗殺により瓦解し、
聞喚章に沸き起こった野望は費える。
しかし、暗い想いを抱えたまま、李富と道を違え、
青蓮寺も二つに割れる。
宗の政情は、高俅、蔡京、王輔などの権力争いで混沌としている。
南と北の騒乱は、北が燕雲十六州を宗が手にする形で収束し、
南の宗教反乱は、御用の策動により童貫を危地に落としいれるかに思えたが、
呉用の作戦が破棄され、大敗北する。

南・北の動乱の間隙をつき、梁山泊は一挙に侵攻し、一州を支配地の納め、独立国の体裁をとる。

楊業の血を引く蕭珪材は禁に帰属し、
方臘と伴に最後まで闘った精鋭は梁山泊に合流する。

方臘と戦ったことで闘いに倦んだ童貫と禁軍は
異様な戦いでえた心の傷を回復するため調練に入る。
回復したとき、いよいよ楊令と童貫の激戦が開始される。
次巻が早く読みたい。