三国志 第六巻2008-12-25

宮城谷昌光   文藝春秋   1619円

孔明の出路と赤壁の戦いが語られる巻。

演義からの影響を極力排除し、
正史等を十分に解釈し引用、
かつてない「三国志」の世界が広がっている。
劉関張三兄弟や孔明ばかりが注目される三国志に飽きた人には、
最高の三国志。

うそうそ2008-12-25

畠中恵   新潮社   514円

「しゃばけ」シリーズ5作目。現時点ではシリーズ唯一の長編。

妖の血を引く江戸・長崎屋の一人息子・一太郎が、
仲の良い妖たち力を借りて難問奇問を解決していく、
ミステリ風大江戸人情物語。

祖母お吟は狐の妖である皮衣ということで、
特別な能力はないものの、妖が見える一太郎。
病弱で、両親から、二人のにいやたちから、溺愛されている。
いい加減自活しなければと思い悩む20歳前。

そんな若だんなは、身の回りの謎を仲間の妖たちの力を得て、
解き明かしていく。

さて、今回の舞台はいつもの長崎屋界隈ではない。
なんと若だんな湯治に箱根に出向くのである。


江戸に頻発する地震で怪我をした若だんなを心配した母・得たえが、
百度で得た啓示。若だんなを湯治に出せばよい。
おかげで若だんな、二吉と佐助、それに兄の松の助、
合わせて4人で箱根を目指した船旅に出る。
ところが、出向してすぐに二」吉も佐助も行方知れずになる。
若だんな心細さを感じながらも箱根を目指して旅を続ける。
どうにか無事に塔ノ沢に着いたと思ったら、
武士二人に人攫いにあうこととなる。

さて、どうにりますことやら。

作品の冒頭で若だんなの夢の記述と、
変わり朝顔の話題がさりげなく配されている。
途中でも、いきなりからすが登場したりと、
伏線はふんだんに盛り込まれている。

江戸に頻発する地震と、若だんなの夢が若だんなの身の上を暗示する。
小田原で出会う「新龍」という雲助が話す伝承も、
次第にシンクロしてきて、あらら若だんな大ピンチじゃありませんか。
どうなるかと読み進めていけば、
若だんなの世間知らずが、かえって事態を解決していくことになる。

若だんなと山ノ神さんの娘、
それぞれを守るに吉と佐助に天狗たち、
里のものやら、一藩の事情など複雑に絡み合う様はあきさせない。