君と一緒に生きよう ― 2009-08-06
森絵都 毎日新聞社 1400円
森絵都は1968年生まれの作家。
児童文学で数々の受賞歴があるほか、『風に舞いあがるビニールシート』で第135回直木賞を受賞するなど、幅広く執筆し多くのファンを擁している。
本作はノンフィクションとして毎日新聞紙上に掲載されたものをまとめたものとなる。帯に「愛が無くては始まらない。愛だけでは救えない。」とあり、興味を惹かれ読むことにした。
書かれている内容は、
人の社会の中でさまざまに翻弄されていく犬たちの様子を伝え、
犬たちを救い伴に生きようとしている人たちの思いを綴っていく。
不要とされた犬たちが、その現状を知り状況を変えたいという思いや、
人の身勝手を許さないとする思いをもった人たちによって
再生されていく様を伝えている。
この国のあちこちで進行している命を軽視した
どこか狂ったペットをめぐる状況ををあぶりだすと伴に、
ペットに訪れる理不尽さに凛然とした思いを抱く活動家たちの姿から
社会の病理として暴いていく。
助けている者たちの姿は美しく描かれている。
啓蒙のために必要な書ではあると感じるところだ。
もし、アークエンジェルズ改めエンジェルズの活動を知らなければ、
静かな感動を感じていたのかもしれない。
そしてこれらの活動家たちに支援をしたいと思うに違いない。
作家の創作意欲というものは、
それ自体作家本人の意識を投影しているものに過ぎないとは言え、
影響力から考えればノンフィクションとして執筆するのならば、
取材は綿密にして欲しいものだと思う。
この作品の中で描かれている数々のエピソードは
犬たちと人のすばらしい交流のものばかりである。
だけれど現実は必ずしもすばらしいものばかりとは言えない。
保護する人たちにも、引き取る人にも、捨てる人たちにも、
それぞれに暗い暗いものはある。
一流の作家たるものが見えている表面にのみ目を向け
安易な感動物語を生み出すことの影響を考えて欲しいものだ。
本書にはワンライフの活動も収録されている。
プロジェクトXのナレーションばりにかっこよく語られている言葉の向こうでは、
保護犬がホスト宅で先住犬を噛み殺していたり、
大阪府和泉市でのブルセラ犬レスキュー活動では
いったん現場に入っていながら不可解な撤退を行っている。
また集めた支援金にも暗い噂が立っていた。
さらに現場から犬を持ち出し転売したというような噂さえ立っていた。
保護活動の中にある種の暗部が存在する。そのことを微塵も感じさせない。
こうした事実は調べればすぐに出てくる。
なのにこの作家はそうした暗部から目を逸らし続けていくのだ。
犬を助けている人たちを手放しで英雄視する。
こういう作家の態度、
またそれを美談として出版していくマスコミの対応に
一抹の不安を覚える。
こういう姿勢が保護団体の狂気を助長しているのかもしれない。
森絵都は1968年生まれの作家。
児童文学で数々の受賞歴があるほか、『風に舞いあがるビニールシート』で第135回直木賞を受賞するなど、幅広く執筆し多くのファンを擁している。
本作はノンフィクションとして毎日新聞紙上に掲載されたものをまとめたものとなる。帯に「愛が無くては始まらない。愛だけでは救えない。」とあり、興味を惹かれ読むことにした。
書かれている内容は、
人の社会の中でさまざまに翻弄されていく犬たちの様子を伝え、
犬たちを救い伴に生きようとしている人たちの思いを綴っていく。
不要とされた犬たちが、その現状を知り状況を変えたいという思いや、
人の身勝手を許さないとする思いをもった人たちによって
再生されていく様を伝えている。
この国のあちこちで進行している命を軽視した
どこか狂ったペットをめぐる状況ををあぶりだすと伴に、
ペットに訪れる理不尽さに凛然とした思いを抱く活動家たちの姿から
社会の病理として暴いていく。
助けている者たちの姿は美しく描かれている。
啓蒙のために必要な書ではあると感じるところだ。
もし、アークエンジェルズ改めエンジェルズの活動を知らなければ、
静かな感動を感じていたのかもしれない。
そしてこれらの活動家たちに支援をしたいと思うに違いない。
作家の創作意欲というものは、
それ自体作家本人の意識を投影しているものに過ぎないとは言え、
影響力から考えればノンフィクションとして執筆するのならば、
取材は綿密にして欲しいものだと思う。
この作品の中で描かれている数々のエピソードは
犬たちと人のすばらしい交流のものばかりである。
だけれど現実は必ずしもすばらしいものばかりとは言えない。
保護する人たちにも、引き取る人にも、捨てる人たちにも、
それぞれに暗い暗いものはある。
一流の作家たるものが見えている表面にのみ目を向け
安易な感動物語を生み出すことの影響を考えて欲しいものだ。
本書にはワンライフの活動も収録されている。
プロジェクトXのナレーションばりにかっこよく語られている言葉の向こうでは、
保護犬がホスト宅で先住犬を噛み殺していたり、
大阪府和泉市でのブルセラ犬レスキュー活動では
いったん現場に入っていながら不可解な撤退を行っている。
また集めた支援金にも暗い噂が立っていた。
さらに現場から犬を持ち出し転売したというような噂さえ立っていた。
保護活動の中にある種の暗部が存在する。そのことを微塵も感じさせない。
こうした事実は調べればすぐに出てくる。
なのにこの作家はそうした暗部から目を逸らし続けていくのだ。
犬を助けている人たちを手放しで英雄視する。
こういう作家の態度、
またそれを美談として出版していくマスコミの対応に
一抹の不安を覚える。
こういう姿勢が保護団体の狂気を助長しているのかもしれない。
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