徳川家康(上下2巻)2010-11-01

荒山徹   実業之日本社   1500円

ウィキペディアによると荒山徹は1961年に富山県で生まれ、現在は大阪に住んでいるらしい。
新聞社、出版社勤務を経て作家となった。
新聞社勤務の折、指紋押捺反対運動を取材し、大韓民国に興味を抱き留学もしたそうだ。
作家としては、日本と朝鮮の二国間を舞台にした独創的な時代小説を野心的に執筆し続けており、
朝鮮半島または朝鮮人が出てこない作品は存在しないとのことだ。

さて本書『徳川家康』は『トクチョンカガン』とルビが打たれている。
そう、やはり朝鮮半島とのかかわりの中で、
影武者徳川家康説を小説化してみたという感じである。

ダ・カーポで『最高の本2010』グランプリをとったとのことだが、
ぼくはさほどのものじゃないという印象である。
龍慶一郎に『影武者徳川家康』という大傑作があるが、
荒山氏、本作中で何度も故隆氏の作品と自己の作品の違いをアピールする。
まず、その姿勢が鬱陶しい。
伝奇小説を意識して、へんな妖術・忍術を不用意に登場させる。
この作品の流れに、そうした超能力は不必要だ。
へんに山田風太郎張りの伝奇小説を意識するから、せっかくの流れが寸断されて気持ち悪い。

荒山氏の作品をすべて読めば、こうした気色悪さも解消されるのかもしれないが、
この作品を読んでしまったことで、荒山作品に対する食指は萎えきってしまっている。

結局のところ、隆氏の『影武者徳川家康』の緊迫感を越えられなかったというのが、
この作品に対するぼくの評価となる。

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