荒海の槍騎兵2021-03-10

横山信義

20年以上前に架空戦記物にはまっていた。
荒巻義雄の「紺碧の艦隊」や田中光二といったSF出身者や、
檜山良昭とか志茂田景樹なんかも読んでいた。
何やかやと50タイトルくらいは読んだ気がする。
そもそもは高木彬光「連合艦隊遂に勝つ」とか豊田壌「四本の火柱」から、
仮定が変われば戦果は変わったかという物語に興趣を持つことになった。

こうした物語は戦国期でも数多あるし、三国志などでも数多くある。
公営のゲームなどはやったのも同じ理由だったろう。

その中でも気に入った作家が横山信義だ。
大艦巨砲主義のまま太平洋戦争が始まる」「八八艦隊物語」
真珠湾奇襲に失敗し瑞鶴・飛竜以外の空母を失った「修羅の波濤」「修羅の戦野」
といった作品を楽しんだものだ。
その後架空戦記物は手にすることが減ったが、
たまに思い出しては横山作品を読んでいる。
「海鳴り果つるとき」
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2008/12/17/4012524
戦艦「大和」最後の光芒 (全2巻)    
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2011/01/09/563134
などだ。

横山作品の最大の特徴は、
戦艦の活躍場所が数多いこと、
国力の差が物を言う展開にすること。
贔屓の引き倒しになりがちな架空太平洋戦記にしないことだ。

10年ぶりに読む横山作品だが、
今回の設定は真珠湾作戦を読んだ米軍が
太平洋艦隊をフィリピンに展開する。
そのためごてを踏むことになった日本は南方戦線に地帯をきたし、
さらに南遣艦隊が劣勢のまま太平洋勘太と激突する羽目になる。
もう一つは開戦時に高角砲装備の防空巡洋艦が4隻就航している点。

防空巡洋艦は古鷹、青葉、加古、衣笠の20センチ砲搭載重巡を
連射性能に優れた長10センチ高角砲に換装した艦で。
空母護衛を目指したものである。
史実にはない兵装が戦局にどう影響するかが読みどころになる。

現在4巻までが刊行されているが、
序盤は米軍の指揮官が間抜けすぎる戦術を執り、
ちょっとあり得ないほど有利な戦闘が展開されている。
数度の海上戦闘で日本は軽空母1隻と戦艦2隻を失うが、
米軍は主力空母全喪失、戦艦多数喪失、
英軍も戦艦1隻沈没、レパルス拿捕とさんざん・
だが4巻からは米軍の生産力が日本軍を圧倒し始める展開になっていきそうだ。

接収したレパルスは防空戦艦になるのだから、
(といっても日本では弾薬製造していないが)
さらに防空力が強化される。
ヘルダイバーやアベンジャーといった新鋭機と
防空巡洋艦の戦いが4巻以降の読みどころとなりそうだ。