君の名残を 上巻2006-02-21

『四日間の奇跡』が大ヒットした朝倉卓也の作品。
上,下巻で1000ページを超える大作だ。
宝島文庫からの出版。

元は大のSFファンの僕にとっては、
上巻を読む限り、もやもやとした印象をもつ。
タイムスリップものに位置付けてよいのだが、
題材の扱い方や、タイムスリップが起きる意思のあり方が
どうしても素直に受け入れられない。
『四日間の奇跡』は高い評価をしていただけに、
手ひどい肩透かしを食らったように感じている。

物語は現代から書き起こされる。
剣道に精進する高校生友恵と武蔵、それから友恵の親友由紀の弟四郎が
雨の夕刻落雷とともに忽然と消えうせ
平安時代末期に跳ばされてしまう。
そしてそれぞれが時の流れの中で、
友恵は源義仲の妻・巴御前
武蔵は源義経の家来・弁慶
四郎は後の執権・北条義時
となり、時代を導いていく。
そして狂言回し的な存在として、
殺戮に染まった阿修羅こと盛遠が配される。
盛遠は運命の皮肉から近親婚ののち、
実母まで殺害する過酷な運命の後
時を動かそうとする意思により、3つの名前で
友恵たちを時の流れに引き込んでいく。

物語の構成から言えば、
手塚治の『火の鳥』と半村良の『戦国自衛隊』をミックスさせたような味わいだ。
だが、輪廻の思想や時の意思といった概念の扱い方が、
どこか中途半端で、僕には物足りない。
下巻での展開に期待しているが、
こういう作品の成り立ちから予想すると
最後まで不足感が残るように思っている。

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