あたしの一生2006-03-10

副題は「猫のダルシーの贈り物」
ディー・レディの作となっている。江国香織の訳で、飛鳥新社から、1400円

僕はペットを飼うなら犬以外には考えられない。
世の中ではウサギやいたちの類、爬虫類にむ両生類など、
僕にとっては考えもつかない動物を飼う人もいる。
猫を飼うというのも、実は僕には考えられない行為なのだ。
猫のような人から独立して暮らす傾向のあるものと一緒で、
いったい何が楽しいねん。なんて思っている。
ずっと昔、うちに猫がいたことはある。
母が無類の猫好きだったのだ、姉も猫が好きだ、
僕はといえば、猫が可愛いとは思うものの
シンボルとしてのみ捉えているように思う。
猫のごとく自由に生きたいと憧憬を抱く。
だけれど、決して飼おうとは考えない。

それが、この本を読めば揺らぎだす。
ここで語られる暮らしは、それほどに魅力的だ。

ダルシーと呼ばれる猫の視点でかかれるこの作品は
ダルシーと「ダルシーが「あたしの人間」と呼ぶ女性との
17年間を描いている。

様々な事故や事件を乗り越えていったとき、
ダルシーと「あたしの人間」は落ち着いた穏やかな時間を手に入れるのだが、
穏やかな時間はダルシーの発病によって、
「あたしの人間」の願いにもかかわらず、その時間を閉じようとする。
その最後の瞬間が、限りなく美しい「愛」だけに、
最後までほんわかとした気分で読み終えることができる。
ほんとのところは、飼い主としてのつらい決断をしているのだけれど。

この本を読んで、「ごお」との日々がかぶってしまった。

9点