私が見たと蠅は言う2006-03-09

エリザベス・フェラーズ 早川文庫 720円

1945年に発表された作品ということで、もはやミステリの古典である。
新訳になり、初訳に比べて明るいものとなったそうだ。
確かに随所に軽やかな人の息吹が感じられる。
古い作品だけに、捜査手法などで違和感を感じるところもあれば、
精神分析のところでも、定説とは異なるところも感じる。
しかし、作者は論理性を損なうことのない意外性を
時代背景も上手に利用して用意して見せている。
今でも読んでおもしろいと感じ゜させる

物語はロンドンにある安アパートで起きる。
それぞれに癖のある住人たちが住むアパートの一室で
拳銃が発見される。
以前の部屋の住人はフランスに行くといい出て行ったのだが、
その当人は射殺死体で発見される。
発見された拳銃が凶器と判明する。
アパートの住民は、この事態に疑心暗鬼を起こし
それぞれに推理しだし、犯人探しを始めた。

それぞれに不可解な部分を持つ住人たちの犯人さがしが二転三転するうち、
意外な事実が明らかになる。
そのときヒロイン・ケイは、真犯人によって襲われることとなる。
絶対絶命のケイがとる行動と、その結末はうまく時代背景をつかんでいて
この物語のかるみの成立に寄与している。

8点