襲撃者の夜2008-10-26

ジャック・ケッチャム    扶桑社    762円

胸糞の悪くなる作品という観点で言えば、
ケッチャムほどのものは他にいまい。
美少女をいたぶり殺してしまう「隣の家の少女」、
いきなり愛犬を殺された男の執念で、
一家が全員新で行く「老人と犬(RED)」
「地下室の折」は妊婦に異様な執着を見せる男の狂気を描く。
登場する人物はいづれ劣らぬ狂気を宿す。
被害者でさえも侠気に蝕まれている。

ホラーのイメージとは異なるが、
その異様な人物造形から、、並の怪物にはない恐怖が生まれる。
いや、人ではない怪物の無邪気な殺戮振りに比べたら、
人間の中に潜んでいる狂気や破壊衝動、
愛情と憎悪の二面性が生み出す狂気はより恐ろしい。
その意味では底抜けのホラーなのだろう。

ケッチャムは多作家とはいえない。
作品の異様さから、一般受けするのも難しいと判断されたのか、
日本で紹介されている作品も少なかった。
この数年で邦訳が進み、代表作のほとんどが紹介されている。
本国でも人気が浸透しているようで、
キングなどの作家から賞賛を浴びるカルト作家から、
ベストセラー作家として見られているようになってきている。
開設には「隣の家の少女」は映画化が進んでいる書かれている。
僕は映像化された作品を見たいとは思わないが、
優れた作家かが日の目を浴びるのは喜ばしいと思う。

「襲撃者の夜」は「オフシーズン」の続編として書かれた。
「オフシーズン」
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2007/06/09/1566069
では、人類と平行進化してきたのか、
全く分明と接触していなかったのか、
食人をいとわない一族が、
シーズンの終わった避暑地で彼らが起こす惨劇を描いていた。
発表時に表現の過激さゆえに数々の割愛を余儀なくされたという、
伝説のモダン・ホラーである。

「オフシーズン」のラストで、この一族は抹殺されていたのだが、
一人が生き残り、人間社会から子供をつれてきて、
ファミリーの再生を図っているとの設定になっている。
前作から11年が経過している。

ストーリー自身は前作同様の振興となっているので、
あらすじ等は割愛するが、
11年前に事件の異様さから、
生存者を射殺してしまった警察署長をふたたび登場させ、
過去のミスに悩む姿を活写しているところや、
被害者の一人の亭主、離婚調停中、の以上行動が描かれている。

前作同様人肉の料理レシピもあるが、
前作ほどには凄惨さは感じない。
むしろ今作では食人族の描かれ方は、
僕たちの感情世界に寄り添っている。
前作で感じた恐ろしさは、むしろ元亭主に感じる。

分刻みでの進行は前作同様。緊迫した筆致は健在。
「オフシーズン」の世界に比べたら、
人間復権のテイストもあり、
僕にはケッチャムらしくないなと思わせる作品となっている。

全然違うのだが、クーンツのようだと感じたしだい。

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