覇王の番人 (上下2巻)2011-10-09

真保裕一    講談社    各762円(別)

1961年生まれの真保氏は1991年に「連鎖」で江戸川乱歩賞を受賞している。
以後、吉川英治文学新人賞、このミス1位、山本周五郎賞、新田次郎文学賞短編集
など多くの文学賞を得ている。
また、「ドラえもん」や「鋼の錬金術師」には脚本で参加している。
映画『ホワイトアウト』の原作者としても知られるが、
現在までに出版された著作は30作品を少し超えた程度である。
作家歴は20年に達するが、作品数は専業作家としては少なめと思う。
結構な人気作家だと思うのだが、残念ながら読んだのは「取引」しかない。
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2008/11/24/3973749

「覇王の番人」は、戦国時代を題材とする歴史ミステリとなる。
明智光秀を主人公に、日本史上最大のミステリと目される、
本能寺の変のなぞ解きを行う。

本能寺の変は、作家であれば一度は題材に取り入れてしまうものだ。
信長への光秀の私怨説から、朝廷の陰謀説、
信長の命によるものなど、
まあ、珍説・奇説入り乱れていて楽しい。

「覇王の番人」の場合、これまでの作家が描きだした世界を、
集大成するようなものとなっている。
新機軸といえるのは、朝廷の陰謀も匂わせながら、
光秀と近しいある男が、秀吉と結託し、光秀を唆してしまうところであろう。
本能寺の変を、信長への光秀謀反に導かせるために、
毛利、秀吉、朝廷を諜報によって牛耳っていくところなど、
ありえたかもしれないと思わせるだけのものにはしている。
もう一点としては情報の価値を高く評価したところ。
忍びを物語の前面に据え、光秀の織田家中での躍進は、
忍びの情報収集力と光秀の分析能力にあったとする点だ。
影の主役・小平太の活躍は読みどころになる。

信長・秀吉・光秀などの事績については、
後世の余計な挿話とみられるところは省き、
事実のみを採録して書かれている。
そのことで、より人の欲深さが浮き上がっており、
人の作り出す歪みを描き出す壮大な物語となっている。

抜群の家臣統率力を有していたとされる光秀は、
武将としての能力も高く、抜群の行政手腕も持ち、
かつ一流の教養人としても有名である。
そのうえで慈愛の人で公正無私。
これほどのスーパースターであったかは、少々疑問である。

信長を描く場合、旧来の権威や慣習を否定した革新性が評価される。
兵農分離をすすめ、領地に縛られない兵団の運用、
意思決定を合議からトップダウンに変えたこと、
能力が高ければ家柄などを無視し抜擢したことなど、
変革者としての面が魅力としてとらえられている。
徹底した合理主義者であり、成果主義、能力評価による、
家臣団の才を搾り取るさまは、経営者層の支持が高い。
しかし一方で、意思決定の迅速さや地域性を無視した政策は、
ともすれば不要な衝突を生み出したと推測させる。

真保氏が、光秀を通して語る信長像は、
それら成果・能力主義の欠点を顕にさせている。
別に光秀のような上司がいいとは言わないが、
昨今の成果能力主義は行き過ぎと感じているので、
そのあたりから同意できる。

今しばらくの安静が必要。2011-10-09

先週、「そらん」の暴走で階段から落ちた。
落ちた調子にお尻を強打した。

痛い。

木曜、痛みが引かないので病院に行った。
レントゲンでは骨には異常なし。
まずは寝て治すしかない。

でも、椅子に座るのも大変。
立ったり、座ったりするたびに脂汗がにじむ。
寝る時も工夫がいる。
大の字ではねられません。

今週はドッグランには行けない。
さすがの「そらん」も理由がわかっているだけに、
昨日、今日と、折檻しには来ていない。