読書記録10月2011-11-01

7月まで
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8月-9月
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ベン・トー                     アサウラ  
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2005年のロケットボーイズ           五十嵐貴久
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非正規レジスタンス 池袋ウェストゲートパークⅧ
石田衣良
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守護天使                     上村佑
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王様ゲーム                    金沢伸明
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ファントム・ピークス 北林一光
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階段途中のビッグ・ノイズ           越谷オサム
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完全女子抹殺ゲーム              佐藤シエラ
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犯罪小説家                    雫井修介
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覇王の番人 (上下2巻)             真保裕一
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心星ひとつ みおつくし料理帖 高田郁
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いっちばん 畠中恵
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謎解きはディナーのあとで 東川篤哉
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レイクサイド 東野圭吾
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ボックス! (上下2巻)               百田尚樹
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正義のミカタ                   本田孝好
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殺人鬼フジコの衝動 真梨幸子
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不思議系上司の攻略法
不思議系上司の攻略法2           水沢 あきと
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カラスの親指                   道尾秀介
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彩雲国物語 紫闇の玉座 上・下       雪野紗衣
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犬のおまわりさん          永森裕二 原案 柳雪花 著
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暴力団 溝口敦
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10月の走行距離2011-11-01

10月に入っての最初のドッグラン行きで、
ちょっとした油断で「そらん」に足を掬われ、
臀部を強打したばかりに、
一時、運転するのもつらくなり、
今月のお出かけは2回飛んだ。
で、先月に引き続き、あまり乗っていない。

11月中旬には八ヶ岳行を考えているけれど、
今年は寒くなるのが遅いから、
スタッドレスへの履き替えは12月にすることにした。

10月は1321キロキロ。
犬たちは約630キロキロの移動。

ヴェルファイアでの通算走行距離は26576キロになった。
今年になっての走行距離は約15720キロ。
犬たちも今年に入って約8940キロ乗車した。

大延長2011-11-04

堂場舜一     実業之日本社     720円

著者は1963年生まれ。
読売新聞社で社会部記者やパソコン雑誌編集者を務め、
そのかたわら小説を執筆し、2000年に野球を題材にした「8年」で
小説すばる新人賞を受賞した。
受賞後の第2作は「雪虫」で、警察小説と俗に言われるミステリ。
以後、スポーツ小説と警察小説の両分野で作品を発表している。
著作数は40作を超えている。多作家と言える。

「大延長」は2007年に発表された高校野球を題材とした傑作。

大会屈指の好投手を擁し、初出場ながら決勝戦に臨む公立進学校・新潟海浜。
決勝の相手は、圧倒的打撃力を誇る甲子園常連の西東京代表・私立恒正学園。
海浜のエース牛木とキャプテン春名は、
恒正の四番打者・久保とリトルリーグでのチームメート。
両校の監督・白井と羽場は大学時代のバッテリー。
相手の性格も戦力も知り尽くした夏の全国高等学校野球選手権大会・決勝は、
両校譲らず、延長15回の引き分けとなり再試合に持ち越された。

海浜は生徒たちが自主的に物事を決める伝統がある。
恒正は、監督が管理下に置く野球を実践している。
羽場は、有望な投手だったが、大学選手権での優勝と引き換えに投手生命を失っている。
白井は、強打者でありプロに進んだが、故障から引退、指導者に転身している。
守の海浜と打の恒正。
選手の個性が前面に出るチームカラーと
選手に個性を求めないチームカラー。
対照的な両チームの対決である。

海浜はキャプテン・榛名春名の大会前の負傷欠場にのみならず、
エース牛木の連投を、彼の将来を考える羽場の決断で投げさせないと決めた。
戦力的に劣勢に立たされた海浜は苦戦が予想される。
一方の恒正には、選手の喫煙が決勝直前に発覚し、チームに動揺が走っている。
監督の白井は、諸事情も絡み移籍話を水面下で行っていたが、
それが白井の苛立ちに輪をかける結果となる。
ましてあろうことか移籍話は選手に発覚してしまい、動揺は広がる。

そうした状況で決勝は開始される。
下馬評通りの打棒で優位を確立した恒正に対して、
海浜は結束力と驚異的な粘りで対抗する。
不測の事故なども重なり、役者が全員揃った決勝の大舞台は、
熱く語られている。

奇跡の試合は、かかわった者たちを大きく成長させていく。

両監督の選手時代に監督だった滝本がラジオ放送の解説者。
野球の輪廻が、奇跡の決勝戦の舞台を整えた。
この結末こそが、スポーツをする者たちの喜びなのだろう。

守護天使 みんなのキズナ2011-11-06

上村佑    宝島社    505円(別)

「守護天使」の続編。
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2011/10/10/6144020
村岡から啓一に電話があった。
「村岡の命を助けたければ200万円用意しろ。」
ヤマトとともに集金した金を流用して助けに向かう。
そこには巨漢の男・ゴローと手錠でつながれた村岡がいた。

ゴローは、発達障害があってのことなのか、
肉体の強靭さは凄まじいほどなのだけれど、
ヒーローへの憧憬を抱いたままの純粋な心を持つ男だった。
やくざ組織に利用され悪事に染まるゴローを助けたい。
200万円はそのための資金だった。
が、そのときすでに
裏社会でのし上がろうとする暴力組織から唆され、
ゴローは日本最大の暴力組織・狭仁会会長を弾いていた。

その殺人は狭仁会No2の野望も絡んでいた。
秘密を維持するため、ゴローと村岡は、
狭仁会からもむ伊地知組からも追われる羽目になる。
ついでと言っちゃなんだけれど、
啓一とヤマトは警察からも追われる羽目となる。

手助けしてくれるのは、SNSで啓一とネ友の会員たち。
無事彼らは苦境を乗り越えられるだろうかといったところ。
設定はチープですが、ネ友たちの個性がなかなかにいい。

本作では啓一の嫁の勝子がパワーアップして登場している。
もはや人ではありません。
ターミネーターをも凌駕しています。
何より怖いのは勝子です。
全巻で登場した麻美もヤマトへの愛情全開になり、
もはやこの一団無敵ですね。

結末のつけ方は、なんというべきか。
発端とは異なる部分もあり座りが悪くなっています。
バッド・エンディングになっています。
でも、どうせなら最悪のパッドエンディングでもよかったんじゃないかと思います。

変に最低限の人情を残したところが甘々です。
この終わり方では次作の展開は不可能と思われますが、
やっちゃうのかなあ。

疲れました。2011-11-08

早朝、まだ暗い中目覚ましの音で起き、
めったに取り出すことのないスーツを着込み、
東京まで日帰りの出張に出た。

で、所要を済ませて帰阪のため16時20分の新幹線に乗った。

順調なら19時前に新大阪に着く。
ところが京都の手前から、なかなか進まない。
5分遅れくらいで京都に着いたと思ったら、
そこからなかなか発車しない。
気にせず本を読んでいたが、
いっこうに動く気配がない。

で、流されている車内放送をよく聞くと、
何者かが線路に侵入し、その捜索をしているのだという。
で、発見されたものの、今度は逃げたらしい。
確保されるまでさらに時間がかかる。
やっと確保されたかと思ったら、
次は安全確保のため線路の点検。

結局のところ京都駅を出たのは8時過ぎ。
新大阪に着いたのは8時30分ごろだったような。

お騒がせ男君。
どうせならもう少し抵抗してくれよ。
もうちょっとで特急料金払い戻しやったのに。
博多まで延伸前なら一時間で返してくれたけど、
今は2時間やもんなあ。

10月初めに打撲した臀部が完治していないから、
ずっと座っているのもつらかった。
それでも救いは停車が京都駅でラッキー。
線路上なら不満が爆発しただろう。

さよなら妖精2011-11-09

米澤穂信    創元推理文庫    743円(別)

2004年に発表された出世作。
この作品を契機にこのミスでも常に上位に位置するようになった。

米澤作品は、「犬はどこだ」などを除いて、
高校生から20歳くらいまでの人物が主人公に設定されている。
また、殺人という扇情的な事件ではなく、
そこかしこに転がっている出来事を謎に変えてしまう。
読み終えて苦みがあったとしても、さわやかさが填補されたものである。
だから青春ミステリと呼ばれることが多い。
本作も、まさに米澤作品の代表と言えるたたずまいとなっている。

守屋路行が電話したのは高校の同窓生・太刀洗万智。
記憶をたどることで一人の少女の足跡を推し量ろうというのだ。
賛同した白河いずる、集まりはできないものの資料提供をする文原竹彦。
だが太刀洗は協力を拒絶する。

一年前、下校途中の守屋と大刀洗は雨宿りをするひとりの少女と出会う。
少女はマーヤと名乗った。ユーゴスラビアから日本に来た。
聞けば所持金も少なく、宿泊先もない様子。
袖触れ合うも他生の縁。
守屋たちは同級生の白川の家を紹介した。
そして少女と4人の高校生が、3か月に満たない交流を果たす。

マーヤは、いずれ祖国で政治の世界に入るため、
他国のいろいろなものを吸収しているのだという。
マーヤが日本の情景に驚き『哲学的意味がありますか?』と問う。
そして守屋たちもユーゴという国の謎を知り驚く。
遠い国から来た少女・マーヤと過ごす、謎に満ちた日常。

いよいよユーゴの情勢が緊迫した時、マーヤは帰国する。
帰国する場所を知らせることなく。
覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、そして紫陽花。
謎を解く鍵は記憶のなか。
マーヤはどこに帰ったのか。最大の謎解きが始まる。
マーヤと大刀洗の優しさが胸にしみる一冊です。

なまづま2011-11-10

堀井拓馬    角川ホラー文庫    552円(別)

日本ホラー小説大賞受賞作との帯で買った。
が、よく見ると長編賞の受賞ということで、
大賞というわけではない。
だから「夜市」あたりと比べると完成度はずいぶん低いと感じる。
「佐央理ちゃんの家」に感じた突き抜けた娯楽性もない。
ただ、ただ、気味の悪い、生理的に受け付けないものだった。

妻を失った男の一人称の視点で書かれている。
最初に提示されている男の像は、
最愛の妻―理想の妻として述べられているーをなくし、
空っぽになってしまった、ただ無為に日々を過ごす、
虚無の中にいるものとして提示される。

男は、研究所の所員である。
研究所はヌメリヒトモドキという
得体のしれない生物を地上から排除することを目的としている。

ヌメリヒトモドキは、ナメクジに似た肢体を持つものと推定される。
あるいはウミウシとか、そういったイメージのものである。
粘液を残して這いずり、不快な臭気を放つ。
生きているものには興味を示さず、
命を失ったものであれば、何でも食べてしまう。
決して死なない。
女王から生まれ、周期的に女王のもとに帰り融合し、そして再生する。
人間はヌメリヒトモドキを嫌悪し、
ヌメリたたきを持ち追い払おうとするが、
どんどんと個体は増えていくばかりなのだ。

人間の中には、倒錯した性格のものがいて、
一般的には嫌悪されるヌメリヒトモドキをひそかに飼育し、
自らの歪んだ欲望を満たそうとしている者もいる。
そのようにして人間と接触したものは、
人型ヌメリヒトモドキとなる。

男の研究班では、そうした人型ヌメリヒトモドキを、
人為的に成長させようとしている。
そうしてできた個体は、移そうとした人格をトレースする。
人としての知性や感情まで模倣する。

そこで男は計画する。
妻を再生させようとするのだ。

美しく語られる妻の描写と、著しく不快なヌメリヒトモドキの描写とで、
執拗に制裁に語られる。
その過程は、異様である。

男のヌメリヒトモドキは次第に妻の姿を再現していくのだが…。

最後の暗転の部分で、男が愛していたものの正体が明かされる。
そのときヌメリヒトモドキへの嫌悪より、
人への嫌悪を感じずにはいられなくなる。

オンリー・チャイルド2011-11-11

ジャック・ケッチャム 扶桑社 590円(別)

「オンリー・チャイルド」は原題が「Stranglehold」といい1995年に発表された。
ぼくのケッチャム履歴は上の2冊のほか
2007年に映画化されたという「隣の家の少女」に、
「オフシーズン」
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2007/06/09/1566069
「襲撃者の夜」
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2008/10/26/3849202
そのほか「老人と犬」と「地下室の箱」も読んでいる。
邦訳作品では「ロード・キル」1994「黒い夏」2001「森の惨劇」2009が
いまのところ未読である。
いずれは読みたいと思っている。
が、ケッチャムを読むには心のエネルギーが満タンでないと、
闇の中に引き込まれてしまいそう。
ゆえにあまりお勧めはしない。
比較的落ち着いて読めるのは「老人と犬」だと思うが、
それとていきなりショットガンで犬を殺すシーンを目にしてしまうから、
健康的なものとはとても言えない。
ぶっ壊れた人を見せつけられてしまうと覚悟が必要。
こんなにぶっ壊れた人間を描く作家は他に例を知らない。
近いのなら桜庭一樹だとか、真梨幸子だとか、沼田まほかるだって、
それこそいっぱいいるが、
ケッチャムほど不気味で不安に陥れられる作家はいない。
人前でケッチャムの小説が好きです。興奮しますなどのたまえば、
その時点で立派に異常者リスト入り間違いなしでしょう。
が、あえて言います。僕はケッチャムの作品が好きです。
誰にでも起こりうる恐怖として、これほど怖い小説を書く人はいないだろう。

「オンリー・チャイルド」は、男女二人の物語といえる。
その粗暴さを隠したまま成長し、

アーサー。子供の時から頭脳明晰であった。
だが彼は母親からの虐待を受けながら育てられいた。
ために彼は性格的に歪んだ悪がきへと成長していた。
うちの粗暴さや残虐性を世間から巧妙に隠しながら、
端正な、そして人好きのする男として、
事業でも成功をおさめ名士としてふるまっている。

リディアは聡明で美しい看護士。
彼女は父親から性的虐待を受けた過去がある。
卒業して結婚をするが価値観の違いから離婚を経験している。

そんな二人は大学でニアミスをしていた。

それぞれの道で暮らしていた二人が再び出会うのは、
リディアの妹バーバラの結婚披露パーティー。
会場がアーサーの経営するクラブだったのだ。
アーサーがリディアに目を留めたこと、
リディアの友人の唆しもあり、
2度目の邂逅から、2年後には息子ロバートを抱くこととなっていた。

優しく金持ちの夫との幸せな、表面的にはそう見えていた、結婚生活。
それがロバートの成長とともに変わっていく。
次第にアーサーの秘めている昏い熱がリディアに向けられる。
連続殺人を起こしているアーサーの狂気は、
アナルセックスの強要、暴言、銃器への偏愛、
さまざまな姿でリディアに向けられていく。
それでも子煩悩な父の姿を見せるアーサーに、
リディアは耐えていた。愛していてさえいる。
だが、ついに暴力がリディアに襲いかかった時、
その狂気はロバートにさえ及びかねない。
気づいたリディアは離婚を決意する。

離婚後、アーサーのロバートへの面会権を拒むことはできない。
ロバートも父と会うのを楽しみにしていると考えていた。
が、離婚前からロバートはしばしば奇妙な行動をとるようになっていた。
その奇妙な行動は、徐々に強まっていく。
そう、アーサーは息子のカマを掘っていたのだ。
すべてが判明した時、リディアは戦いを決意する。
正義を果たすための善意が集まっても、
法は、リディアたちを守るものではなかった。
法が守ってくれないなら、自ら決着をつける。
ロバートを守るためリディアがとる行動が、
最悪の結果へとなだれ込んでいくこととなる。

アーサーの狂気も怖いが、法のあり方も怖い。
アーサーの母・ルースがロバートに向ける目線も怖い。
悪夢の繰り返しを予感させることが何より怖い。

異様な物語の中に複線的にさまざまな怖さが錯綜している。
リディアの犠牲が、本人が望んでいるところに結びつかないのが、
何よりも怖い。
ダンス家の男たちなどかわいいとさえ思える。
ルースの異常さが際立つ。社会のゆがみが怖すぎる。

陽だまりの彼女2011-11-12

越谷オサム    新潮文庫     514円(別)

「陽だまりの彼女」! 
素敵なタイトルじゃあないか。

陽だまり…。
僕は思うんだが、冬の日のお日様がさす窓際だとか、
とにかく寒い日だって、光が集まってポカポカしているところっていい。
ぼおっとして、まどろんでしまったりしてね。
そういう恋を描いているのかもしれない。

ところで陽だまりと言えば“あれ”。
生まれ変われるなら“あれ”っていうほどに憧れている。
もしや、この小説、“あれ”がらみなんか?
だとしたら読まずばなるまい。

とにかく『階段途中のビッグノイズ』はよかった。
あの作者なのだから、読後に買わなきゃよかったと思うことはないだろう。
仮に甘い恋愛に終始したとしても、読むに堪えないほどには甘くなるまい。
期待満々で読み進めた。
期待以上の面白さだ。

一粒で2度美味しいは、アーモンド・キャラメルのキャッチだった。
それ以上。一冊でどんどんテイストが変わっていく。
さわやか恋愛小説からミステリへ、
ミステリからミステリーへ、SFかと思わせ、
ファンタジーだったりする。
もう一冊でどれだけの要素入れ込むの。
作中では人もめまぐるしく変わる。変わる。
“あれ”の伏線もてんこ盛り。
こんなに楽しい物語はほかに知らない。

奥田浩介と渡来真緒。
広告会社の新人社員・浩介。新進アパレル会社の企画の真緒。
打ち合わせの席で10数年ぶりという劇的な再開を遂げる。
中学生だった真緒は、知的な、そして美しい女性になっていた。
再会した二人は懐かしさも手伝い、たちまち恋に落ちた。

中学の時転校してきた真緒は、きれいな女の子だったけれど、
奇妙な行動が多いうえ、学校有数のばかと称され、
いじめの対象になっていた。
その有様を見、我慢しきれず介入した浩介も、
切れるやつとの烙印を押され孤立する羽目になった。
孤立した者同士、中学時代二人はとても仲良く、
恋人といっても差し支えない関係になっていた。
だけれど家の都合で浩介が転校し、
少年期の気恥ずかしさなどもあって、
離れ離れになっていた。

序盤は、二人の微笑ましい、ゆっくりとした恋の温め方がさわやか。
中盤に差し掛かり、真緒の家族の反対に、
駆け落ちするんだというあたりがほんわかさせる。
このあたりから“あれ”の姿もちらちらしだす。

中盤過ぎからは、真緒が浩介に秘密を持つとわかる。
このあたり二人の新婚生活がどこに行くのかと心配させる。
でも、二人で乗り越えるところがさわやか。

終盤に差し掛かるあたりでは、
真緒の言動が不安を誘う。
遺言めいた言葉が多くなるなど、
バッド・エンディングが待っているのかとハラハラさせる。

最終盤、ついに真緒が姿を隠す。
悲恋でおしまいかと思っていたら、
サプライズを用意する。

ラストの2ページのやり取りが見事。
「真緒、お前、金魚のブライアン食ったろ」
見事すぎる言葉で、すべてを変えるマジックに、やられました。

“あれ”そのものな性格の真緒に恋したい。
で、この小説は一言でいえば、
“あれ”の物語ということです。
小説そのものも“あれ”みたい。

いよいよ、冬。2011-11-15

17日から19日にかけて「犬の牧場」に行く。

先週行くつもりだったのに、天候がはっきりしないため順延していた。
牧場周辺は標高が海抜1400メートルある。
大阪と比べると高原でしかも内陸、
夜の気温差なら軽く10度は変わってしまう。
寒けりゃ0度付近まで冷え込む事だって考えられる。
で、すでに雪マークが出る日もある。

ちゅうことでスタッドレスの出番と相成る。

夏用タイヤに履き替えたのが14750キロだ。
今回の履き替え時の積算距離はは27222キロ。
履き替えて以降だいたい12970キロ走ったことになる。
夏用タイヤでの通算距離は18250キロ。
すでに5分山とは言えない状況。2分か3分か溝の残りはそんなもの。
やはりヴェルファイアは重い。
セレナの時と比べたら、運転もおとなしめだし、
カーブでこじるようなハンドリングもしていない。
なのに、この減りよう。

スタッドレスのほうも、どう考えたってこのシーズン限りだと思われる。
下手すればシーズン途中で冬用タイヤとしての寿命を迎えるかも。

大きな車には維持費がかかるということなのだ。