非正規レジスタンス 池袋ウェストゲートパークⅧ2011-10-18

石田衣良    文春文庫    524円(別)

今更ながらのIWGP第8集の感想です。

相変わらず石田氏は料理がうまい。
世界の歪を、日本の歪を、
エンターテイメントという表現の中で抉り取る。

社会問題として現在の最大の課題は、
富の一極集中が進んでいることに、どう対応するかだ。

21世紀に入って、新自由主義の文脈で進められた現在の状況は、
労働分配率を著しく勝者に厚くしている。
誰でもが勝者になれるような甘い夢を与えられて、
敗者予備軍であることを忘れさせられて突き進んだ世界だ。
弱者や敗者にとってはセイフティ・ネットワークが破壊された今、
生きていくののがやっとという状況になってきている。
もはや社会問題として「貧困」は、どうしようもなく広がっている。

この8集で石田衣良は、母子家庭と派遣労働者の境遇に踏み込む。
どちらも目を背けてしまうような話だ。
そのマコト流の解決は暖かいものである。
でも、それはほんの一部の者にしか届かない。
もっと、みんながこれらの病巣の大元を探す目を持たなければ。
そう思わせる。

ほかの2編も狂いかけの時代を切りとっている。好著。