謎解きはディナーのあとで2011-10-17

東川篤哉    小学館    1500円(別)

えらい本屋で積まれているから、売れているんだ、と感心していた。
読んでみようとは思ったものの、
評判になっているというだけで手にするのは口惜しい。
まずは軟化を読んでからと思い、「もう誘拐なんてしない」をまず読んだ。           
http://kumaneko.asablo.jp/blog/2011/08/02/6005729
おバカではあるが軽妙で読んでいて楽しい。
で、遅ればせながら、やっと読むことにした。

安楽椅子探偵もので片付けたらしまいです。

ただ、主要登場人物の設定が受けるところかな。

巨大コンツェルンの令嬢・宝生麗子が新人刑事という設定。
上司は風祭モータースの御曹司である風祭警部。
警部はシルバーメタリックのジャガーを乗り回して事件現場に駆け付ける。
捜査では、誰でもすぐにわかることを得意げに開陳する。
かなりええかっこしいで、麗子に秋波を送り続けるが、
麗子には、セクハラまがいの発言などで嫌われていて、相手にされない。

この二人が事件現場で珍妙な捜査をする場面が、まず受けているのだろう。

二人ともセレブなのに、その態度の対照さなど、面白いとは思う。

結局は二人とも無能の人である。
事件を難解に解釈するため、解決の糸口に至らない。
ここで登場するのが麗子の執事・影山。
影山は事件の内容を麗子に聞かされるだけで、事件の真相を推理し解決していく。

景山は執事の立場にありながら謎解きの際には、
麗子に毒舌・暴言を吐く。吐く。
いじけた麗子は、お嬢様と思えない口調で応酬する。

景山に対して怒りながらも知恵を借りる麗子。
そればかりか麗子は景山に依存していくのである。

麗子と風祭、麗子と景山の掛け合いが楽しい、ライトミステリー。
なんか、僕はいまさらと思ってしまうのだけれど、
この古典的な安楽椅子探偵ぶりは、安定した安らぎは与えてくれる。
どろどろとした謎に食傷気味なら、
この作品にはほっとするに違いない。