ベン・トー2011-10-11

アサウラ    集英社スーパーダッシュ文庫   620円

ライトノベルである。
著者のアサウラは1984年生まれ。本作が3作目のようだ。
かなり人気の作品のようで、現時点でシリーズは9冊を数える。
小説で挿絵を担当している柴乃櫂人の手によりコミック化され、
テレビアニメ化も始まっているようだ。

だが、内容はといえば、年寄りが読んだところで、
面白いと思えるものは何もない。
ただひたすら弁当を奪い合う小説なのだ。
弁・闘ですな。
戦いの動き自体が荒唐無稽である。
登場人物のネーミングは、いかにもライトノベル的だし、
ワンアイディアの展開はパターン化してしまっているし、
登場人物たちの個性も極端が過ぎる。

もし、45歳以上の人が読むなら、
口直しを用意したうえで臨むべし。

スーパーなどで5時を超えたら弁当・惣菜などが見切り値で売られる。
その時間ごろにスーパーに行けば、
数々のドラマがみられるのは周知のことだろう。
係りの者が出てきたら、ついて回って安売りシールをはったものをすぐとる人、
時間少し前にカートに欲しいものをとっておき、
係りが出てきたら割引シールを張らせに行く人、
そういうのがゴロゴロ見られる。

少しでも安いものを手に入れるため、
あらゆる戦略が駆使されている様は圧巻である。
僕もシールが貼られている現場に幾度も出会わせているが、
割引されたものを手にするのは、時として難しい。
素早いのだ。異様に。
どれにしようかと考えたりしていては、
あっという間にめぼしいものが消えていく。

その現場を戦場とみなし、一定のルールの下で奪い合うというのが、
「ベン・トー」のメインテーマである。

その修羅場ともいえる現場にいるのは、
主として寮住まいの高校生だという設定。

くだらんといえば、限りなくくだらないが、
あの現場に居合わせる者には、なんとなく笑えるだろう。
このテーマで9作品を生み出せるのだから、すごいね。

不思議系上司の攻略法 不思議系上司の攻略法22011-10-11

水沢 あきと   メディアワークス    598円 ②641円

こういう作品が出るあたり、ライトノベルを手に取る年齢層は、
確実に上がってきているということなのだろう。
ライトノベルというと、昔でいうところの冒険小説、
SF、ファンタジーというところが主流であり、
剣と魔法の物語といってよかった。
ところが昨今は様相が変わってきており、
桜庭一樹などの重厚な純文学的な作風もあれば、
日常をコメディタッチに切り取る作品が増えてきた。
主人公格も、従来は10代後半らしきもの、あるいは年齢不詳のものが多かった。
そこも20歳代後半の者が中心に据えられる例も増えてきた。
このままでいけば少年漫画が全世代を読者層にしてしまったように、
ライトノベルもやがてはおっさん・おばはんのものとなる日も近いのだろう。
この水沢作品から、そのように感じさせられた。
それを幼稚化と呼ぶ者もいようが、
別にエンターテイメントに重厚も軽薄もないだろう。
要は読んで楽しいと思わせればいいのだ。
心に染み入る作品は、そういうライトノベル的なものとは別に、
発展していけばよいのだろう。

著者の水沢あきとについては多くが未知のまま。
2006年に作家デビューを果たしているが、
現在もIT系企業に勤務し、二足のわらじであるということしかわからない。
IT企業に勤務している。2006年にデビューしている。
そういう情報から推し量れば、著者は30歳前後と推定される。
本書の主人公格の梶原健二が、ほぼ著者の実像となりそうに思う。
IT関連の人は、結構おたく系文化に精通しているし、
おたく系文化に精通していればメイドへの理解も深そうだ。
そのような観点で見れば、本作は相当なデフォルメがされているとはいえ、
現代のサラリーマンの姿を切り取ったものとなっている。

IT系企業でシステムエンジニアをしている健二は、
クライアントに連れられメイド喫茶に行く。
そこで出会ったのはカヨというきれいなメイドさん。
健二の勤める会社は業績が芳しくないため、
親会社から立て直し要員が派遣されてくる。
その中の一人が、なんとカヨだった。
それも直属の上司になっちゃった。
カヨの秘密暴露はしないという意思表示のため、
健二はメイド喫茶に料理人としてはいることにする。
そこでカヨの本音に触れる健二。
カヨはまともに業績を立て直ししようと考えている。
だけど、冷たい顔で事に当たるため、
コストカッターとしてのカヨに周囲は反発する。
カヨの二つの顔を知る健二は、
そんな両者の間でジタバタしてしまう。
それぞれが別な行動をしながらも、
最後はトラブルを回避していくあたりは、
まさにご都合主義。

そういう乗りの作品です。

現実性があるのかといえば、おそらく絶対にないとは思うけれど、
こういうファンタジーが世界にあってもいいじゃないかと思ってしまいます。
カヨにべたぼれの健二がいじらしいし、
健二への好意がありありなのに、
恋愛に発展しないカヨのあり方もハラハラの原因。

…こんな上司がいたら、仕事なんて手につきそうにはない。

2では、メイド喫茶は背景に押しやられています。