悪いものが、来ませんように2019-03-04

芦沢央  角川文庫  600円

タイトルからホラー的なものが強いのかと思い読んだ。
結果はホラーのかけらもなかったけれど。

この人の作品も読んだことはない。(と、思う。)
もし読んでいたとしたら、
たぶん湊かなえや茉莉幸子あたりの作品として
僕の中では処理されているのだろう。
今作を読んだ限りでもそういう感じ。
ある意味いやミスの先人たちの劣化版に思えてしまう。

本作品を読んでいて鼻についた点が
登場人物たちの関係を
ことさら誤解させるようにしているところ。
親と子が友人かと錯覚させるところが、たまらなく鬱陶しい。
殺人に至る経過と、罪をかぶる点でも腑に落ちない。
毒薬による死と思い込む容疑者が、
どの時点でアナフィラキーショックによる死と知ったのかわからない。
そうした点が読み進めるうえでの障碍になった。

そうした点を抜きにした感想は、よくできているといえる。
親と子の共依存と、子のない主婦の追い詰められた感情など
本当によく描かれている。
母の生い立ちからくる歪み、娘たちの屈折、婿の身勝手さなど、
その心の動きは不気味だが説得力がある。

物語の進展に伴い様々に語られる証言がさしはさまれるところも、
使い古した手法ではあっても、効果的に挿入されている。
いくつかのまどろっこしさがあるものの、文句なしの力作であった。

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