嶽神 (上・下)2019-05-16

長谷川卓  講談社文庫 各743円(税抜き)

「嶽神」シリーズの一冊。
刊行順では3番目だったようだが、
時間軸では「嶽神伝 鬼哭」の後に位置する。
「嶽神」シリーズを今から読むなら
刊行順ではなく時間軸に沿って読むのが正しい。
重複するところがあるがおおむね次の順になる。
「血路」(1542-48)→「無坂」(1542-48)→「逆渡り」(1547頃)
→「弧猿」(1549-)→「鬼哭」(1556-1570)→「嶽神」(1582-)
→「死地」(1583)の順。

「嶽神」は武田家滅亡時から始まる。
先に読んだばかりに、「嶽神」の主たる多十のことが
なかなかわかりにくいものとなった。

ある罪を犯し顔に印を刻まれ追放を受けひとり渡りとなった多十だが、
山中で病を起こし困窮しているところを、
落ち延びる勝頼一行に助けられる。
回復後、織田に追われる勝頼一行に出会い、
幼い嫡男・若千代を落とすよう頼まれる。
そこから真田や伊賀の忍者との壮絶な戦いが始まる。

多十一行は、鳥使いの能力を持つ遺児・若千代に
勝頼がつけた武士・新之助と侍女・千歳、
隠し金を探索中に虐殺されたムカデ衆生き残りで、
少女でしかないが火薬の扱いに長けている連が加わる。
新之助と千歳は早々に退場するが、
多十・連・若千代は最後まで物語の中を生き抜いていく。
この3人に、後々様々な人がかかわり、加わる。
多十らに敗れ墓場送りとなった真田の忍者・サカキ、
墓場でしぶとく生き延びてきた蓑吉と火森である。
ほかには勝頼室との繋がりから風魔が助けたりもする。

真田の猿にしろ、徳川の伊賀者にせよ、
多十らをはるかにしのぐ強力な相手である。
それらを相手にして、山の者の知恵と、それぞれの得意技を駆使して、
劣勢を跳ね返していく過程が心湧き立たせる。

若千代が武田の隠し金を秘密を解くカギと思い、
執拗に狙う伊賀に猿。大久保長安とムカデ衆たち。
多十の追放を画策した涌井谷衆の者たちとの因縁。
それらが絡み合い、息をのむ展開が続く。

「血路」「死地」と同様に敵対する忍の特殊能力は異能というしかなく、
武田の忘れ形見が山の者として再生していく姿だとか、
武田の隠し金をめぐる暗闘だとか、伝奇小説として一級品だと思う。

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